マイケル・ジャクソンの顔について(28)Fred Astaire

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☆(27)のつづき

MJに大きな影響を与えたとされているフレッド・アステアは、1987年に亡くなっていて、アステアの影響が強い、SF「Smooth Criminal」(映画「ムーンウォーカー」)はその翌年の1988年に公開され、同年の自伝『ムーンウォーク』もフレッド・アステアに捧げられています。

そこには、モータウン25周年記念コンサートで「Billie Jean」を歌い、初めて「ムーンウォーク」を披露したMJに、

「ホントよく動くな。昨日の晩、みんな腰抜かしとったぞ」「君は怒れるダンサーだ。私とおんなじだよ。私もステッキを使っておんなじことをやったものさ」「昨日、私はあの特番を観たんだ。録画しておいて、今朝、またもう一回観てしまったよ。君はとんでもないダンサーだな!」と、翌日電話をかけてきたアステアが言った通りの言葉が記されています。


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わたしは、過去のダンスレジェンドや、映画にも詳しくないんですが、下記のとてもとても素敵なブログから、わたしが「You Rock My World」に関連すると思った部分を引用し、動画を添えてまとめました。
尚、具体的なダンス・スタイルの類似に話を絞れば、マイケルのアステア流儀は、明らかに後続のボブ・フォッシー(アステア信奉者)を介して引き継がれている。ダンサーとしてのマイケルのキャリアに革命をもたらした「Billie Jean」のパフォーマンスも、タネを明かせば、マイケルなりのフォッシー解釈の所産と言えないこともない。『星の王子さま(The Little Prince)』の「A Snake In The Grass」を見れば、'80年代以降のマイケルのダンスがいかにフォッシー美学に多くを負っているかが分かるだろう。





「Dangerous」の雛型として特筆しておきたいのが、アステア信奉者でもあるボブ・フォッシーが振付を手掛けた『The Pajama Game』のナンバー「Steam Heat」






アステアの『Royal Wedding』の有名な “天井ダンス” も、長編ヴィデオ『Ghosts』の中でしっかり取り上げられている。

(天井ダンスは2:40ぐらい〜)





「Smooth Criminal」は、フレッド・アステア主演『The Band Wagon』の終盤に登場するプロダクション・ナンバー「The Girl Hunt Ballet」の影響を強く受けている。「Girl Hunt」の中で最もマイケル度が高い瞬間は、事件の手掛かりを求めて探偵役のアステアがナイトクラブに入店する場面だろう。「You Rock My World」で実際これと全く同じ動きを見せている。






「Smooth Criminal」では、ステージに巨大なスクリーンが掛かり、そこに巨大な踊るシルエットが投影されるという演出が見られた。これは『有頂天時代(Swing Time)』に登場するアステアのソロ・ナンバー「Bojangles Of Harlem」からの引用である。(シルエットのシーンは5:00〜)





これは上でアステアがトリビュートしている
ボージャングルと、
MJが終生好きだったシャーリー・テンプルの共演




「Dangerous」の演出は『Top Hat』におけるアステアのソロ・ナンバー「Top Hat, White Tie And Tails」を連想させる。「Dangerous」とより具体的な類似が見られるのは、ジュディ・ガーランド、ジーン・ケリー主演『Summer Stock』に登場する「Get Happy」(ジュディはライザ・ミネリのママ)





「Dangerous」という曲は、ダンスの演出とはまた違った部分でアステアから大きな影響を受けている。Aメロが始まる前にマイケルがブツブツ喋っている語り(ラップ)部分に注目。目の前に現れた眩惑的な女のことが、以下のように表現されている。元ネタはまたしても「Girl Hunt」。これはシド・チャリースに関するアステアの以下のモノローグからの引用である。
 
“She came at me in sections, more curves than a scenic railway. She was bad. She was dangerous. I wouldn't trust her any farther than I could throw her.

女が来た。悩ましい曲線美だ。危ない。近寄るな。信用できる代物じゃない。

“She was bad”以下は、「Girl Hunt」劇中で繰り返し登場する印象的なフレーズ。“She came at me in sections〜”という表現も、「Dangerous」2コーラス目の冒頭でそのまま使われている(“She came at me in sections with the eyes of desire”)。

もともと歌詞の時点で「Girl Hunt」を引用していたこの曲のステージ・パフォーマンスが「Smooth Criminal」に続いてギャングものになったのは、半ば必然と言えるかもしれない。「Girl Hunt」がなければ『DANGEROUS』というアルバムのタイトルもなかったのだろうから、その影響は莫大である。(以上『STRONGER THAN PARADISE』より)


MJは70年代後半に放映されたジャクソンズ時代のTVシリーズ番組でも、「Girl Hunt」をネタにし、「Get Happy」も歌っていました。でも、1983年のモータウン25周年記念コンサートの「Billie Jean」には、そんなにアステアの影響は感じられないと思うんですね。

MJの歴史的瞬間として、有名なシーンですが、その後のMJの「Billie Jean」を見すぎているからでしょうか。今から見ると、このときのムーンウォークは、距離も短いし、帽子もないし、MJの並々ならぬ決意というか、オーラはスゴいのですけど・・ダンス部分では、特に「アステアの後継者」という称号が相応しいかと言えば、そうでもないように、わたしには見えます。

実際、当時の記事でも、このときのMJのことを、現代のシナトラとか、エルヴィスと言った表現が多かったようですし、アステアと言えば、ハリウッド一のお洒落で粋と言われたひとで、MJも「Smooth Criminal」「The Way You Make Me Feel 」のSFでは、アステアと同じファッションをしていますが、彼はそういった賞賛とは無縁でした。


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ムーンウォークの起源も古いものですし(「ムーンウォークの起源」参照 )エレガントなダンスだけでなく、黒人系のダンスもよく研究していたアステアにとっても、決してめずらしいものではなかったはずですが、どうして彼はこのときのMJを、それほどまでに「とんでもない」と思ったんでしょうか?

また、アステアは亡くなる前「自分の後継者が誰か知らないままこの世を去りたくなかった。ありがとう、マイケル」と語っていたとも言われていますが、

アステア流のミュージカル映画が造られなくなってからも、ミュージカルや、ダンス分野で、永遠に「教科書」として遺るような、確固とした「伝説」を遺しているアステアが、後継者に託したものって、何でしょう?



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サミー・ディヴィス・Jrは、12歳のMJを見て「パンが人類の食卓に載った時以来のすごいやつになる」と賞賛したことが有名ですよね。でも、サミー・ディヴィス・Jrは、MJには経験したことがないような、過酷な人種差別があった時代に、3歳から舞台に立って、アメリカ中を巡業するような生活から、成功をつかみ、片方を失明する等の困難にもめげず、晩年に至るまで世界中で愛され尊敬された、本当にスゴいエンターティナーで、

また、一見してわかるように、アステアもサミー・ディヴィス・Jrも、190センチぐらいで普通に見えるようなアメリカ社会にあって、小柄で、痩せていて、ハンサムでもありません。彼らは、そのコンプレックスを乗りこえて、スターになったと思うんですが、MJのように、10歳でスターになり「家の前にファンの女の子がいなかった記憶はない」というような若者のことを、そこまで賞賛するのは、ちょっと不思議な気がしませんか?



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MJは、例えば、Ne-yoには、マイケル・ジャクソンぽい雰囲気があるとか、アッシャーや、ジャスティン・ティンバーレイクのことも褒めていますけど、このときのアステアに似たような感情を抱いたことはないように思うんですね。(88歳で亡くなったアステアと比較するのは無理がありますが...)

わたしは、晩年まで、世界から尊敬を失うことなく、88歳まで生きたアステアの方が、MJよりも、辿り着けなかった「夢」があったからだと思うんです。そして、その「夢」が、MJには伝わったのではないでしょうか。

わたしには、彼らが、ただ、MJのことを先輩として褒めているだけでなく、12歳のときも25歳のときのMJにも、自分たちが出来なかった「夢」を感じているような気がするんです


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SF「Smooth Criminal」を見ることなく亡くなったアステアですが、その13年後に、もう一度、アステアへの思いを込めた、SF「You Rock My World」には、彼らだけではなく、いろいろな思いや、影響を感じますし、わからないものも、たくさんあるとは思いますが、

何度か見ているうちに、わたしには、アステアとサミー・デイヴィス・Jr への思いが強く感じられるようになりました。

『クインシージョーンズ自叙伝』では、彼がMJとアルバムを創っていた頃「彼はジェイムズ・ブラウン、サミー・デイヴィス・ジュニア、フレッド・アステア、ジーン・ケリーを崇拝し、研究していた。」という記述がありますし、様々なインタヴューで、MJはその名前を出していましたが、

2003年のブレット・ラトナーのインタヴューでは、師匠として影響を受けたのは、


BR : Do you have a. mentor or someone who inspired you?

MJ : Yeah, I do: Berry Gordy, Diana Ross, Thomas Edison, Walt Disney, James Brown, Jackie Wilson.



と答えていて、アステアと、サミー・ディヴィス・Jrの名前が消えています。彼らへの想いは、すべてやり尽くしたという心境なんじゃないかと感じてしまうのは、わたしが「MJには意味のないことは1ミリもない派」だからでしょうか。



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下記のとてもとても素敵なサイトから、再度引用します。

◎『STRONGER THAN PARADISE』マイケルの最強ショート・フィルム【第9位】
http://strongerthanparadise.blog122.fc2.com/category18-1.html#no66

「Smooth Criminal」はもちろん「Girl Hunt」と多くの点で異なるが、決定的な相違点を挙げるなら、ずばり、このシド・チャリースの不在に尽きる。

そのままコンセプトを拝借していながら「Smooth Criminal」の場合、もっぱら「Girl Hunt」のシュールでマンガ的な側面が強調され、何かセクシュアリティが欠落した、去勢されたようなミュージカル場面になっているところにマイケルらしさが強く感じられる。

およそ男性的とは言えないマイケルが、アメリカ的マッチョイズムの権化のようなタフガイ像を演じることにはもともと無理があって(中略)同様の問題は、実は元ネタである「Girl Hunt」のアステアも抱えているのだが、「Girl Hunt」の場合、そうしたマッチョイズム自体をパロディ化することで、その問題点が巧みに回避されていた。アステアが演じるタフガイ像は、一種のギャグなのである。マイケルの場合、これを大真面目にやっているから、どうしても違和感や歪さが生じる。

その無性的なスター性からしても、マイケルは間違いなくアステアの正統な後継者だったと思う。しかし、アステアよりも更に無性度が高いマイケルの映像作品においては、もはや女性すら出てこない。(中略)「Smooth Criminal」で展開されるのは、まさにそうした、すべてがマンガ/アニメ化されたような世界なのである。(引用終了)


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こういった意見は、この方だけのものではなくて、MJのエンターティナーとしてのスゴさを充分に知ったうえで、徐々に歯がゆい思いをされるひとが多くなっていったのは、ミスター無重力、人間ミッキーマウスと言われた、アステアと比べても、MJの「超人間像」というか、人間離れの仕方は、大人のファンから見ると、子どもっぽく、どこか、軽んじたくなるような要素に満ちていたからだと思います。

・アステアの「Girl Hunt」が、マッチョイズムのパロディ化であること。
・無性的なスター性からしても、マイケルは間違いなくアステアの正統な後継者だった。
・「Smooth Criminal」で展開されるのは、すべてがマンガ/アニメ化されたような世界なのである。


上記の3点にほぼ同意しますが、「マイケルは大真面目にやっているから、違和感や歪さが生じる」という点に関しては、当時は、確かにそんな風に見えましたが、

今は、アステアが「パロディ」としか受取られなかったことを、大真面目にやるような「男」だったからこそ、MJは、この大いなるレジェンドの2人から、これほどまでの賞賛と羨望を持って愛され、その大真面目さは「Smooth Criminal」よりも、さらに倍増して「You Rock My World」に表現されているような気がしています。

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by yomodalite | 2011-06-09 08:33 | マイケルの顔について | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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