マイケル・ジャクソンの顔について(22)幻のSF「Unbreakable」1

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☆(21)のつづき

『Invincible』発売当時、わたしは、このアルバムがそんなに好きではありませんでしたし、大勢のひとがこのアルバムに抱いた第一印象も、今までより少し「取っつきにくい」というものではなかったでしょうか。

◎ Unbreakable

この冒頭の変態リズム3連発といい、シングル曲がようやく6曲目に登場するという、MJのこれまでのアルバムでも、他のヒット・セオリーからも逸脱したような構成がその主な原因だったと思えるのですが、

その理由は、これらの歌のメッセージにあるのではないでしょうか。


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さて、僕にはどうにもわからないんだが、どうして君は
僕を何かで脅かせるなんて思っているいるんだい?
どうしてわからないかな。
僕を傷つけるなんて絶対にできない。
そんなことはさせないからさ。
僕は君の手には負えないよ、ベイビー。
君が僕を破壊するなんて絶対に不可能。
だって僕は不死身なのさ。
(「Unbreakable」(マイケルの遺した言葉)より)

アルバムのタイトルが「Invincible」(無敵)で、1曲目でさらに“Unbreakable”(不死身)とか、今までだって「BAD」(ワル!)とか、「Dangerous」(ヤバい!)とか、意外と「ヤンキー」との親和性を感じなくもないんですが、でも、ヤンキーが「唯我独尊」を勘違いしているのとは逆に、彼は、もっと高次元なレベルで、そう言っているんですよね。

彼女の策に嵌められるなんて思いもしなかった
今でも彼女は僕が気づいたことを知らないだろう
彼女は、僕が別れを切り出すまでこのゲームを楽しむつもり
それでも、最後に彼女が気づくことを祈るよ
僕も、彼女と同じゲームをしていたことをね
(「Heartbreaker」より)

「Heartbreaker」は、手に負えない彼女のことを歌っていますが、結局は...というパターンですね。


君には、僕がしたいことはすべて話しただろう
でも、どうやったところで君には通じないし
君は僕が言ってることを調べてみようともしない
僕を知れば、僕が君が今まで思い描いた以上だってわかるのに
他の誰にも僕のように愛することなんてできない
彼が君にごちそうするって言ったって
僕のようにはできない
彼がダイヤモンドや真珠を買ってくれたって
僕みたいにはできない
彼が世界のどこにでも君を連れて行ったところで
僕のような芸当はできない

(「Invincible」より)


この曲も、なかなか自分になびかない女をテーマにしながらも、そういう女の魅力を語っているわけではなくて、自らの強さの方に力点があると思います。


これらの歌詞の世界は、彼の代表的なパフォーマンスである「Billie Jean」と「Dangerous」でも同様なんですが「危険な女」を歌っているようで、その女に絶対に騙されない、本当に「ヤバい男」を表現しているようです。

これまでも、何度も繰り返してきた、これらのテーマを『Invincible』では、今までのような「ヒット曲」とは異なり、なにか「得体の知れない」感じを残して、3曲連続で、冒頭に叩き込んだのは、彼の中で「ワル!」や「ヤバい男」以上に、このテーマへの思いが強くなっているからだと思うんです。


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MJは、特に聴いて欲しい曲として、何度も「Unbreakable」を挙げていて、この曲をシングルにしたかったことが伝わっていましたが、率直に言って、「Unbreakable」が、「You Rock My Would」より、売れるとは思えませんし、この曲はラジオ局でヘビロテされるタイプの曲ではないと思うんですよね。

MJは、終世No.1セールスにこだわったアーティストだと思うんですが、どうして、それほど売れそうにない「Unbreakable」を、シングルカットしたかったんでしょうか?

ストーリーを話して聞かせることができる人間になりたいと、僕はずっと思ってきました.....そうしたことのできる人間になりたいと、ずっと思っていたんです。ーー自著『ムーンウォーク』冒頭より

彼が、今までの「天才」とは比較にならないほど、多くの才能に恵まれていることは、大勢の人に理解されていることですが、そうであるにもかかわらず、彼の世間的なイメージは、これまでの天才のイメージに沿った、必ずしも「オリジナル」なものではなかったと思います。

チャイルドスター、父親の虐待、家族との確執、子供時代への固着と幼児性愛や同性愛、特異な趣味による膨大なコレクション、奇矯な行動.....

それらは、これまでの天才にもありがちな「イメージ」であって、何人もの天才を世に送り出したモータウン創始者ベリー・ゴーディーにして、1時代に1人に現われる程度のスターではなく、この世に1人しか存在し得ない唯一のアーティストと言わしめた、マイケル・ジャクソンという天才固有の「ストーリー」ではありませんでした。

わたしは、彼が旅立ってから、彼の人生のすべてを知りたくなって、毎日探求の日々を送り、ようやく、生前彼が纏っていたイメージとは異なる、本当に独自な「マイケル・ジャクソン・ストーリー」が見えて来たんですが、

彼は、自分の「ストーリー」を、ずっと、慎重に考えて続けてきたと思うんですね。

『ムーン・ウォーカー』のように、子供たちの優しいお兄さんでありながら、妖しげな酒場に行き、犯罪に巻き込まれ、子供を助けて、ロボットに変身(!)しつつも、なぜか、その後セクシーなロックスターになってしまうような、文学的深みに乏しく、荒唐無稽な「超人」ストーリーの、どこが「慎重」なの?と思うかもしれませんが、、、

彼が、『ムーン・ウォーカー』のあと、結局「映画」を創れなかったのは、そのときの興行的失敗や、その後の逆風ではなく、やっぱり「マイケル・ジャクソン・ストーリー」に慎重だったからだと、わたしは、考えるようになっているんですが、

『Invincible』で、ついに、その「ストーリー」を、彼は、発見したんだと思います。

自分の「ストーリー」として相応しいのは、“Unbreakable”で、“Invincible”だと、確信したんじゃないかと。。。

“Unbreakable”には、ショートフィルム制作も予定されていたと言われています。

では、結局、創られることのなかった“Unbreakable”の、ショートフィルムとは、どんなものだったんでしょうか?

わたしは、“Unbreakable” のSFが、どんなものであったのかについて、監督として名前が挙がっていたデヴィッド・メイヤーズや、ブレット・ラトナーが語っているのを聞いたことがないのですが、(もし、ご存知の方は、ぜひ、教えてくださいませ♡)

このSFが創られなかったことと、このアルバムのプロモをSONYが充分に行わなかったことが、MJのSONYへの抗議の始まりだったと言われていますが、その件については次回。

☆マイケル・ジャクソンの顔について(23)につづく

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by yomodalite | 2011-05-24 23:01 | マイケルの顔について | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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