2011年 03月 09日
天皇財閥―皇室による経済支配の構造/吉田祐二 |
特に「天皇の財産」に関しては、宝探し物語のようだったり、よくある陰謀論の類が目立つ印象がありますが、本書は、それらとは一線を画す良書。
著者は、副島隆彦氏のSNSIの研究員の方で、目次を見れば、内容の確かさが一目瞭然な体裁は、副島本と同様ですが、師である副島氏と違って「暴き系」の趣きではなく、一般的な日本人が、天皇・皇室に抱いているような好感と同様の、穏やかな天皇観の持主。
前書『日銀―円の王権』で、日本銀行の「金融権力」を論じた著者らしく、日本銀行の大株主が天皇家だったとする、正統な「経済」を通してみる「天皇家」という視点が新鮮です。
本書で、著者が展開するのは、美濃部達吉氏による「天皇機関説」に習い、天皇は財閥本社である宮内省を支配する財閥家族、皇族の家長であり、会社法人であるという「天皇法人説」。
その内容が一目で魅力的とわかる詳細な目次は、下記に書き出してみました。
また、まったく期待していなかったことですが、アマゾンから届いた本書を見て、通常のこの手の本には見られない美しい装幀にも驚きました。扇情的でなく、力強く、格調高い知的なデザインは、写真より数段素敵で、教養高い本書に相応しく、こちらも、大満足でした。
☆著者の関連本
◎日本のタブー 悪魔の用語辞典《2》(「リベラル」の項)
◎悪魔の用語辞典(「正しい/間違い」「良いこと/悪いこと」)
◎最高支配層だけが知っている日本の真実(「日本銀行はロスチャイルドがつくった」)
◎エコロジーという洗脳(「環境問題と経済思想ー排出権取引の矛盾」)
[目 次]
はじめに
第一章「財閥の総師としての天皇」
・日本の命運をも左右した超巨大財閥が存在していた
・「財閥」を定義する3つの条件
・天皇は会社法人である
・「主権者」とはいかなるものか?
・イギリスの君主の在り方
・天皇という存在が帯びる二重性
・一般の財閥と類似する天皇財閥の構造
・天皇財閥の持株会社「宮内省」
・GNPの五分の一を占めた天皇家の資産
・明治に始まった天皇家の資産
・明治に始まった天皇家の財産蓄積
・「皇室財産」の形成と元老たちの思惑
・膨張し続ける皇室財産
・謎につつまれた皇室財産の全貌
・天皇は日本一の大地主にして金融王
・天皇を“傀儡”とみなしていた元老たち
・天皇の権力の強さと民の力
・大正で大きく変わった日本の権力構造
・ひと言で内閣を崩壊させた昭和天皇の権威
・権力のバランスを変えた二つの事件
・政治権力に転化した天皇家の財産
第二章「天皇財閥の経営戦略」
・天皇が大株主「日本郵船」の誕生
・海外航路を切り開いた日本郵船
・“世界の日本郵船”へ
・あいついで設立された「私鉄会社」
・植民地経営の会社「南満州鉄道株式会社」
・後藤新平の満鉄による「国づくり」
・満鉄の驚くべき多角経営
・国家企業のモデル「東インド会社」
・新興国アメリカを「覇権国家」にした鉄道ネットワーク
・天皇財閥の植民地経営 ー 朝鮮の場合
・天皇財閥の植民地経営 ー 台湾の場合
・産業国家を機能させる「銀行ー企業」のセット
・金融的な支配を目指した「横浜正金銀行」
・「日本興業銀行」の設立と空前の経営膨張
・激変に見舞われた日本経済
・「日本型」の植民地経営
第三章「天皇財閥の経営拡大」
・恐るべき「国家総動員法」の成立
・「軍財抱き合い」だった戦時の日本
・池田成彬の入閣を機に戦時体制へ
・戦時下における天皇財閥の方針
・天皇財閥の傘下に連なった諸財閥
・国家総動員体制が財閥へもたらした利益
・「国策企業」誕生のパターン
・企業に対する銀行の優位性
・日本が目論んだ中国の金融支配
・太平洋戦争はアメリカの「計画」だった
・戦後の高度成長を可能にした「総動員体制」
・シュンペーターの資本主義発展論
・天皇による帝国経営の完成
第四章「天皇財閥の経営破綻」
・天皇財閥の「経営判断ミス」
・日本との戦争を望んだルーズベルト
・昭和天皇はどんなタイプの「トップ」か?
・古典的にして近代的な君主
・戦前の日本を動かしていた宮中の「秘密政治」
・天皇財閥の四大取締役
・英米の反発で問われた牧野の「経営責任」
・刷新した天皇財閥の経営陣
・終戦までの日本を動かした「西園寺チルドレン」
・木戸幸一のコーポレート・ガバナンス
・東条英機を総理に指名した木戸の真意
・天皇の「戦争責任」をめぐる議論
・グランド・デザインを描いた「世界経営者」たち
・戦責を「負わない」天皇財閥の経営者・天皇
・政治的な力を発揮した「象徴天皇」
・敗戦国日本に対するアメリカの選択
第五章「現代も生き続ける天皇財閥」
・オーナーがいなくなった戦後の日本企業
・日本の企業には「代表者」がいない
・実体のない「法人」が支配するビジネスの世界
・天皇財閥の構造的な変化
・望まれた「天皇グループ」による経済発展
・日銀とその「支店」の戦後
・普通銀行となった三行の特殊銀行
・戦後の植民地経営会社の変遷
・天皇財閥系企業の人的資産の行き方
・もうひとつの天皇財閥系企業
・天皇グループ最大の企業「日赤」
・現代日本の支配階級
・エリート官僚が政治権力者に
・顔のない不気味な企業体「日本株式会社」
・アメリカに仕える天皇グループの経営者たち
・属国・日本の指導者を管理する要員
・天皇財閥最後の総師、昭和天皇
おわりに
_____________
「BOOKデータベース]
明治維新以降、天皇家は三井や三菱をはるかにしのぐ大財閥として、日本経済を“支配”してきた。しかも、戦後、すべての財閥が解体されるなか、天皇家だけは財閥解体されず、形を変えて、今も日本経済を支配しているという。日銀の大株主・皇室による経済支配の痕を綿密に追い、現代日本の経済構造の真相に迫る。学研パブリッシング (2011/02)
[著者略歴 「BOOK著者紹介情報」より]
吉田 祐二/1974年生まれ。千葉大学大学院修士課程中退。出版社勤務などを経て2001年から4年間ヨーロッパ(オランダ)に企業駐在員として赴任。現在も輸出機器メーカーに勤務しながら、政治・経済に関する研究、論文の執筆を行っている。貨幣経済理論および政治思想、近代企業経営史などを研究のテーマとする。SNSI(副島国家戦略研究所)研究員
前書『日銀―円の王権』で、日本銀行の「金融権力」を論じた著者らしく、日本銀行の大株主が天皇家だったとする、正統な「経済」を通してみる「天皇家」という視点が新鮮です。
本書で、著者が展開するのは、美濃部達吉氏による「天皇機関説」に習い、天皇は財閥本社である宮内省を支配する財閥家族、皇族の家長であり、会社法人であるという「天皇法人説」。
その内容が一目で魅力的とわかる詳細な目次は、下記に書き出してみました。
また、まったく期待していなかったことですが、アマゾンから届いた本書を見て、通常のこの手の本には見られない美しい装幀にも驚きました。扇情的でなく、力強く、格調高い知的なデザインは、写真より数段素敵で、教養高い本書に相応しく、こちらも、大満足でした。
☆著者の関連本
◎日本のタブー 悪魔の用語辞典《2》(「リベラル」の項)
◎悪魔の用語辞典(「正しい/間違い」「良いこと/悪いこと」)
◎最高支配層だけが知っている日本の真実(「日本銀行はロスチャイルドがつくった」)
◎エコロジーという洗脳(「環境問題と経済思想ー排出権取引の矛盾」)
[目 次]
はじめに
第一章「財閥の総師としての天皇」
・日本の命運をも左右した超巨大財閥が存在していた
・「財閥」を定義する3つの条件
・天皇は会社法人である
・「主権者」とはいかなるものか?
・イギリスの君主の在り方
・天皇という存在が帯びる二重性
・一般の財閥と類似する天皇財閥の構造
・天皇財閥の持株会社「宮内省」
・GNPの五分の一を占めた天皇家の資産
・明治に始まった天皇家の資産
・明治に始まった天皇家の財産蓄積
・「皇室財産」の形成と元老たちの思惑
・膨張し続ける皇室財産
・謎につつまれた皇室財産の全貌
・天皇は日本一の大地主にして金融王
・天皇を“傀儡”とみなしていた元老たち
・天皇の権力の強さと民の力
・大正で大きく変わった日本の権力構造
・ひと言で内閣を崩壊させた昭和天皇の権威
・権力のバランスを変えた二つの事件
・政治権力に転化した天皇家の財産
第二章「天皇財閥の経営戦略」
・天皇が大株主「日本郵船」の誕生
・海外航路を切り開いた日本郵船
・“世界の日本郵船”へ
・あいついで設立された「私鉄会社」
・植民地経営の会社「南満州鉄道株式会社」
・後藤新平の満鉄による「国づくり」
・満鉄の驚くべき多角経営
・国家企業のモデル「東インド会社」
・新興国アメリカを「覇権国家」にした鉄道ネットワーク
・天皇財閥の植民地経営 ー 朝鮮の場合
・天皇財閥の植民地経営 ー 台湾の場合
・産業国家を機能させる「銀行ー企業」のセット
・金融的な支配を目指した「横浜正金銀行」
・「日本興業銀行」の設立と空前の経営膨張
・激変に見舞われた日本経済
・「日本型」の植民地経営
第三章「天皇財閥の経営拡大」
・恐るべき「国家総動員法」の成立
・「軍財抱き合い」だった戦時の日本
・池田成彬の入閣を機に戦時体制へ
・戦時下における天皇財閥の方針
・天皇財閥の傘下に連なった諸財閥
・国家総動員体制が財閥へもたらした利益
・「国策企業」誕生のパターン
・企業に対する銀行の優位性
・日本が目論んだ中国の金融支配
・太平洋戦争はアメリカの「計画」だった
・戦後の高度成長を可能にした「総動員体制」
・シュンペーターの資本主義発展論
・天皇による帝国経営の完成
第四章「天皇財閥の経営破綻」
・天皇財閥の「経営判断ミス」
・日本との戦争を望んだルーズベルト
・昭和天皇はどんなタイプの「トップ」か?
・古典的にして近代的な君主
・戦前の日本を動かしていた宮中の「秘密政治」
・天皇財閥の四大取締役
・英米の反発で問われた牧野の「経営責任」
・刷新した天皇財閥の経営陣
・終戦までの日本を動かした「西園寺チルドレン」
・木戸幸一のコーポレート・ガバナンス
・東条英機を総理に指名した木戸の真意
・天皇の「戦争責任」をめぐる議論
・グランド・デザインを描いた「世界経営者」たち
・戦責を「負わない」天皇財閥の経営者・天皇
・政治的な力を発揮した「象徴天皇」
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第五章「現代も生き続ける天皇財閥」
・オーナーがいなくなった戦後の日本企業
・日本の企業には「代表者」がいない
・実体のない「法人」が支配するビジネスの世界
・天皇財閥の構造的な変化
・望まれた「天皇グループ」による経済発展
・日銀とその「支店」の戦後
・普通銀行となった三行の特殊銀行
・戦後の植民地経営会社の変遷
・天皇財閥系企業の人的資産の行き方
・もうひとつの天皇財閥系企業
・天皇グループ最大の企業「日赤」
・現代日本の支配階級
・エリート官僚が政治権力者に
・顔のない不気味な企業体「日本株式会社」
・アメリカに仕える天皇グループの経営者たち
・属国・日本の指導者を管理する要員
・天皇財閥最後の総師、昭和天皇
おわりに
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「BOOKデータベース]
明治維新以降、天皇家は三井や三菱をはるかにしのぐ大財閥として、日本経済を“支配”してきた。しかも、戦後、すべての財閥が解体されるなか、天皇家だけは財閥解体されず、形を変えて、今も日本経済を支配しているという。日銀の大株主・皇室による経済支配の痕を綿密に追い、現代日本の経済構造の真相に迫る。学研パブリッシング (2011/02)
[著者略歴 「BOOK著者紹介情報」より]
吉田 祐二/1974年生まれ。千葉大学大学院修士課程中退。出版社勤務などを経て2001年から4年間ヨーロッパ(オランダ)に企業駐在員として赴任。現在も輸出機器メーカーに勤務しながら、政治・経済に関する研究、論文の執筆を行っている。貨幣経済理論および政治思想、近代企業経営史などを研究のテーマとする。SNSI(副島国家戦略研究所)研究員
by yomodalite
| 2011-03-09 09:21
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