スリラー/ネルソン・ジョージ (著)、五十嵐正 (翻訳) 《4》

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1983年、Todd Gray Photo



スリラー/ネルソン・ジョージ (著)、五十嵐正 (翻訳) 《3》のつづき 

この著者だけでなく、マイケルは関わった大勢のひとに「金」を与えてきたけれど、そこには失われることのない「黄金」を受取ったひとと「札束」を受取ったひとが居て、その「価値観」を変えることは容易ではない。

アメリカでは、日本とは比べものにならないほど、酷い報道がなされてきたんだと思う。いわゆるタブロイド誌ではなく、クオリティ誌でも、同様だったことは、本書もそうですが、翻訳者による「あとがき」から伝わってくることが、これまでにもよくありました。

とても書名を紹介する気にはならないけど、MJに対して酷いイメージを持ち、驚くほどストレートに彼を貶めるような「あとがき」を遺している翻訳者がいたことを思い出すと、この本は、著者も翻訳者も「バランスが取れている」(笑)と思う。



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▲1983年、Todd Gray Photo



たった220ページほどで、厚み15ミリの薄い本。これで「THRILLER The Musical Life Of MICHAEL JACKSON」という原題にも関わらず、MJの音楽的仕事に関しては、あまり語らず、浅学な評論ばかりで、その後のアルバムは無視し、自分にはあまりわからないけど隣で見ていた婦人は『THIS IS IT』を見ていて泣いていたとか、『THIS IS IT』に反対する『THIS IS NOT IT』にも一定の共感を表明してみたり、他の国では「スリラー」以降も評価されているとか、

自分で書きたくないところだけ、取材者や執筆者の原稿から都合のいいところだけ利用して記事を作っている新聞・マスコミ同様の手口による(愚民だと思っている)「大衆」へのバランス感覚!



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▲1984年、Disney World



本書にあるのは根拠のない「上から目線」だけで、ゴシップ本のようなバカバカしい創作の努力もないうえに、著者が本気で文化批評をしているつもりになっていたり、金儲けに正義を利用しようとしている点においても、一瞬では済まされない、心の奥底から気持ちが冷えきるような「寒さ」を感じました。


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本当に、この本を読んで、怒りが押さえきれなくて、自分でも予想以上に、だらだらと長く書いてしまいました。尊敬する池乃めだか師匠のように、デカイ相手に挑みたかったんですけど、師匠のようなキレのいいパンチもなく、まだまだ、どこに当てればいいのかわからない練習生なので、考えながら書き始めて見たんですけど、


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特に《第2部》の音楽評論の部分が引っかかったり、「自分の黒人性に問題を抱えている」発言にマジ切れし過ぎて、、スライだけじゃなくて、チャック・ベリーのことまで考え直してみたりとか、いろいろ、自分の範疇を超えてることで、頭がぐちゃぐちゃになって、なかなか終われませんでした。ホント、読みにくくて、スミマセン。


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▲1984年、Disney World


最後にもう一度、翻訳家の「あとがき」へ疑問を呈して、終了します。



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▲「スリラー」PVのバックステージ


翻訳者「あとがき」より

(引用開始)マイケルは、偉大なアーティストたちと同様に、たくさんの矛盾を抱えていたし、それゆえに彼の作品は興味深いものになっていた。その疑問や矛盾に蓋をしてしまってはいけないだろう。

ネルソンは「伝記ではない。音楽評論と回顧録と文化史の混合である」と形容する本書で「目標はマイケル・ジャクソンの才能を称えることであるが、一方で彼の短所を見過ごすことはしない」とバランスのとれた見方によるアーティストとしてのマイケル・ジャクソン像を描く(引用終了)



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マイケルも、他の偉大なアーティストたちも、多くの矛盾を抱えていたと思うが、多くの矛盾を抱えているのは、生きている人間すべてに言えることで、それについて、偉大なアーティストほど突き詰めて考えていない者たちが、矛盾を指摘するだけの浅い「批判」を繰り返していることは、いったい何かの役にたっているのだろうか。

疑問や矛盾に蓋をしてはいけないのは「自分自身」であって、それこそが「Man In The Miller」などの、マイケルの「メッセージ」だったのではないのか。

自分にだけ「蓋」をした状態では、それらを真摯に考えてきたアーティストたちの努力も成果もわかるはずはないし、自らの「俯瞰的視線」そのものに、まず疑問をもつべきではないかと思う。


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▲1983年、Todd Gray Photo



現在のような情報が溢れた社会で「バランスの取れた見方」をするのは容易ではない。できるだけ正確な資料を数多く探すことも、地道な努力と時間を必要とし、その資料の見方も、訓練を必要とする。

ただ、それは少しでも「真実」に近づきたいという要求があるときのことで、いろいろな人が言っていることを聞いて、自分だけ、みんなと違うことを言わないように気をつけるという意味なら、それは、凡人にとっては現実的に役にたつ考え方だと思う。ただ、評論家は、まるで自分がリングの上から見ているような気分に浸っている人が多いけれど「批判」というパンチを繰り出す以上、その戦いには、必ず観客がいてジャッジを受ける。マイケルへの批判者がどれだけ多くても、彼がすべて勝利することを「バランスが悪い」とは言えない。



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▲1983年、Todd Gray Photo



(引用開始)公民権運動〜ブラックパワー〜中産階級と貧困層の二極化という黒人社会の変化と共に発展してきたR&B/ソウル、そして主流ポップ音楽へのクロスオーヴァーというコンテクストをふまえての文章であることが、本書の強みである。邦訳もある『モータウン・ミュージック』(86年)『リズム&ブルースの死』(88年)『ヒップホップ・アメリカ』(98年)といった、ちょうどマイケルのキャリアと重なる時代の米国黒人音楽を論考する優れた著書をものにしてきた評論家ネルソン・ジョージだからこその1冊と言える(引用終了)


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▲黒人と白人の混成バンドである“Sly & The Family Stone”は一世を風靡したが
ブラックパワーから激しく攻撃された。
本書はバランス重視(笑)なので、やはり微妙な記述!



著者の他の本は、一切読んでいませんが、これらの本に書かれているだろう内容を推測すると、著者が望んでいたり、想像していた「黒人社会」が、マイケルの存在によって混乱し、その未来の形も変わったことで、彼を嫉妬させ、マイケルの人生にはあまり見られない「矛盾」が多い文章を書くことになってしまったんだと思います。(たぶん彼は熱狂的なブラックパワー主義者だったというわけでもなくて、きっと、そこも“バランス”(笑)をとっていたと思う)

推測でものを言ってはいけないと思うけど、本書であまりにも疲れ、著者の現在からは、今後の黒人にも、アメリカにも、わたしにも、あまり良い影響を受けそうにないので、これらの読書はパスしたいと思います。

著者が、俯瞰的視線でこれまで評価してきた作品のように、それらは、貴重な試みだったかもしれないけれど、時を超えることができなかったんだと思う。

本書はまさに「深刻な主題を平凡化してしまう許しがたい無遠慮」ばかりでした。
(「 」内は著者の言葉より)


長い長い文章をここまで読んでくれて、心が寒くなってしまったひとへ♡




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▲2006年のグラミー賞トリヴュートのときのスライ・ストーン



◎Sly & The Family Stone 1973 (Part 1)

☆マルーン5による、スライのトリビュート(1:00からマルーン5登場)
◎Everyday People - Maroon 5 Sly and the Family Stone

☆パール・ジャムによる、スライのトリビュート
◎Pearl Jam {RARE COVER} Everyday People(1995)  

☆ジョーン・ジェットによる、スライのカヴァー
◎Joan Jett - Everyday People



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☆2009年のスライのドキュメント映画予告
◎Sly Stone Documentary“Coming Back For More”Trailer

☆スライ・ストーンのウィキペディア
MJのニューアルバムのための作曲も行っていたという記述も(聴いてみたいっ!)これに関して詳しいことはわからないんだけど、MJはスライをずっと尊敬していたし、助けたい気持ちもあったと思う。ただ採用となると、MJは“鬼”厳しいからなぁ(笑)。


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▲1984年、Disney World(ただカメの顔がかわいかったので♡)

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Commented by pyt at 2011-01-10 22:06 x
yomodaliteさんの過去記事、西寺氏の『マイケル・ジャクソン』でさえ(3)で終わっているのに、コレが(4)まで続いたところに相当な「怒り」を感じつつも、スリラー期のステキなお写真と「音」で癒され、またいつもの事なので、普段は別段言わないけれど(笑)、年初というコトで特に言うならば(笑)、相変わらず写真のチョイスが、soo goood!!!

ファンじゃない人がこのような本を読んで、なんとかテイラー・アウォードという権威に騙され、内容を鵜呑みにすることもあるのかなあと思うと、怒りと共に悲しみも覚える。。で、やっぱり真実を語るストーリーテラーは、いつの時代でも必要だよね?最近は「ブログ」が現代のストーリーテラーとしての一助になる時代が来たのかなあと。

この本を買ったことを後悔はしていないけれど、yomodaliteさんの、(つづく)の3文字には、ちょっと気をつけようと思うw
Commented by yomodalite at 2011-01-10 23:54
>(つづく)の3文字には、ちょっと気をつけようと思うw

pytさんには(つづく)以外も気をつけてもらって、出来るだけ、わたしに影響を受けないで欲しいと願っています。

本をお薦めしたところで、まったく「得」しないんだけど、著者に「お礼」が言いたいときと、応援したいなってときだけ、どこかにいるかもしれない「誰か」に向けて、お薦め口調で書いてみたりしていますけど、基本的に、できるだけ「人」を意識したくないんです。反響があるのが嬉しいときもあれば、そうじゃないときもあるし「コメント」以外にも、ブログ主にしかわからない反響っていうのもあるのね。

自分なりに気を遣ってはいるつもりだけど、みんなのことは無理なので、もしかしたら、こんなひとが、たったひとりはいるかもしれないって思うような「人」を想像して、書いているような気がします。

>ブログ」が現代のストーリーテラーとしての一助になる時代が来たのかなあと。

わたしは、2007年の3月からブログを始めたんだけど、ブログに関して思っている感じは、この方に近いかな。。。
◎http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20110105

是非pytさんが一助になってみてください。わたしには無理だけど...
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by yomodalite | 2011-01-09 22:29 | マイケルジャクソン書籍 | Trackback | Comments(2)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


by yomodalite