俺、勝新太郎(廣済堂文庫)/勝新太郎

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89年版『座頭市』のサントラが欲しくて仕方ないんだけど、なかなか見つからない。。

3本の映画の感想に続いて、今度は「自伝」です。

勝新のスゴさに気づいたのも、まだ、ほんの数日前ですけど、この本は、3本の映画を見終わってから、そういえば、まだ読んでいなかったということに気づき、軽い気持ちで、読み始めました。このブログで、勝新太郎が初めて登場したのは、2007年に読んだ、森繁久彌の『品格と色気と哀愁と』という本で、松岡正剛氏が言っている、

勝新太郎と森繁久弥の関係は、日本の男と男が組合わさった最高の「バサラ数寄」をしでかせる無類の組み合わせなのである。

という感じを実感したいとずっと思っているのですが、森繁久彌氏のことはまだ全然わかりません。

その次が、同じ2007年の水道橋博士の『本業』で、そこで、紹介されていた、山城新伍氏の『おこりんぼ さびしんぼ』で、勝新太郎と若山富三郎の兄弟の物語に感動し、吉田豪氏にも、間接的に影響を受け、春日太一氏の『天才 勝新太郎』と、根本敬氏の『特殊まんが家-前衛の-道』を経て、ようやく、本当に『座頭市』に出会うことができました。

だから、これらの方すべてがバトンを繋いでくれたおかげで、『座頭市』には、出会うことができたんだって感謝していて、水道橋博士が、吉田豪氏を、

吉田豪は相手の99の力を引き出し、100の力で書く、
そして読者に200以上を夢想させる。
 
だからこそ、芸能本史上、最強の聞き手として、300%推薦するしだいである


と評しているように、勝新太郎のスゴさを「本」にするには、きっと、本書きのプロの力が必要だよねって思い込んでいて、本人が書いた「自伝」のこと、すっかり忘れてたんですね。

☆この感想は、図書館で借りた、単行本によるもので、文庫本にある、吉田豪氏の解説はまだ目にしてません(現在、注文中)

ところが、読み始めたら、、、

上記の方々の本はすべて、すごく面白かったのですが、この本はそれらとは別次元。89年の『座頭市』に、どれほど感動したか、表現できないぐらいだって、言った、その感動すらも上回るかと思うぐらい感動してしまって.....

ホントに、もう、どうしたら、いいんだろう。。。(笑)

いったい、どこがって思われている方も多いと思いますけど、勝新がどれほどの「天才」だったかって考えると、比較したくなるのは、もう、あの人ぐらいで、まさか、そこまで天才だったとは====!!!!って、いう感じなんですよねぇ。。。

Usherや、NE-YOは、本当にMJのことリスペクトしてると思うし、真面目だし、ダンスもめちゃくちゃ上手いと思うんですけど、どうして、MJのように感動できないんだろうって不思議に思ったことないですか?

同じ動きの、キレの良さだけなら、Usherの方が、MJより、キレイなんじゃないかと思うこともあるんですけど、でも、どういうわけなのか、MJを観たときと同じような「感動」を得ることはできない。。。(ごめんね。アッシャー♡)

彼らだけじゃなくて、ダンスミュージックの人はみんな「振付け」をこなしているけど、MJだけが違うっていうのは、ファンならわかりますよね?

勝新が、座頭市でやろうとして、実際に完成させたことは、通常の「殺陣」とは、全然ちがっていて、「殺陣」だけじゃなく、セリフも、映像にしたかったものも、音も、とにかく、MJの感覚に限りなく近いと、映画を観終わってから思っていたんです。でも、勝新自ら書いた本から、さらに、そのことが、はっきりと伝わって来ました。

それは「音楽に思考をはさんではダメだ」とか「僕はリズムの奴隷......僕は音になる。ベースになったり、とにかく聴こえてくるいろんな音になって、それを体で表すんだ」とか「ダンスは作るんじゃなく、勝手にできあがる」というようなことが、勝新流に「書いてある」からなんじゃなくて、

この本自体から、「音」が聴こえてきて、「リズム」があって、尚かつ、勝新が綴る文章が、歌舞伎座で、中村吉右衛門を観るよりも、遥かに、うっとりできる「芝居」になっているからなんです。

この、文章から音が聴こえて来るというのは、どうやら、わたしの“電波”によるものだけではないらしく「あとがき」で、勝新自身も語っています。

活字を映像にしたことはある。
映像も活字にすることが出来るだろう。そう思って書き始めた。
勝新太郎の映像が、なかなか現れてこない。
勝新太郎って、どんな人間か、
想像したら、子供のころの俺が、逆回転のフィルムのように現れてきた。
逆回転で書いてみよう。
こんな書き方でまとまるのかな。まとまったらおかしいよ。
勝新太郎を書いて、まとまるなんておかしいよ。

祭り囃子の音が、頭の中で鳴っている。

テレツク テレツク スッテンテン

ドーン ドーン ドンカララ

ヒーリャリャ ヒーリャリャ テレツクテン

こんな音に乗って、赤ん坊の頃から書き始めた。
俺の文章を読んだ人が言った。

「うまく言えませんけど、どうも文章から、なんか音が聴こえてくるんです」

どういう意味なんだろう。
活字から、どんな音が聞こえて来たんだろう。皆さん、教えてよ。

平成4年10月22日 あとがきじゃないよ、音書きですよ。 勝 新太郎


この「あとがき」で、わたしは、もう完全にとどめを刺されたんですが、
(“だじゃれ”でも感動できることってあるんですね)

その4ページ前でも、すでに7インチほど突き刺されていました。

(以下、そのページから抜粋引用)

神が世界を不幸にしたのではない。
神が世界を幸せにするのではない。
神が人間をつくったのではない。
人間が神をつくり、平和をつくり、戦争を起こす。
日本が勝っていたら、
マイケル・ジャクソンが今頃、『佐渡おけさ』を歌わされていたかもしれない。
ぞおっとするね。


勝新、やっぱりMJを意識してた=======!!!

これが書かれた頃、MJはデンジャラス期で、89年は、エリザベス・テーラーが、彼を「The True King of Pop, Rock And Soul」と称した年なんですが、同じ頃、勝新は、プリンスからPVへの出演依頼も受けています。

たしかに、MJの「佐渡おけさ」は、ぞおっとするような気もしますが、日本が負けて、日本ではなくなって行く、そんな時代に、日本の伝統文化を背負っていた「最後のひと」が勝新で、彼は、それを背負いつつも、新たな試みを、たくさん成し遂げ、世界から絶賛された「スター」だったと思います。

この本は、最後の映画『座頭市』から1年後の、拘置所の中から書きはじめられた、
勝新太郎の『獄中記』と言えるもの。

この本の表紙写真も、数々の勝新伝説も、一旦すべて忘れて、
眼を閉じて読んでみてください。


勝新太郎の三味線を聴く
バルテュスと節子・クロソフスカ・ド・ローラ




◎[動画]バルテュス&勝新太郎 Balthus&Shintaro Katsu
◎[動画]竹中労語る 勝新太郎
◎[動画]竹中労語る 勝新太郎 / 芸人論

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[単行本・BOOKデータベース]執行猶予四年という手打ちをした俳優が、拘置所の中で、もう一人の自分を見た。真・間・魔・麻…。社外人として書いてみた。痛快・劇薬の書。廣済堂出版 (1992/11)

[文庫版・内容紹介]昭和の名優・勝新太郎の人生録。強烈な人生を駆けぬけた「かつしん」が、ハワイでの逮捕以後、自らの幼少期や役者時代を振り返り、書き下ろした1冊。解説はプロ書評家の吉田豪。

[文庫版・BOOKデータベース]稀代の名優・勝新太郎が書き下ろす破天荒で強烈な人生録。幼少期からの貴重写真も多数掲載。新装版刊行に際して、解説は吉田豪(プロ書評家&プロインタビュアー)が特別寄稿。4000字を超える情報量で、さらなる勝新の魅力に迫る。文庫、改訂版 (2008/8/25)





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Commented by mari-ko at 2011-06-04 16:42 x
こんにちは。

「顔」シリーズを読んできて、(26)で彼の言ってる「子どもへの愛」の本当の姿が分かって。。そしたら、それを世界中に広げたいと思った彼が、本当に理解できた。言い知れぬ思いが湧きあがってきてPCの画面がゆがみました。。

一つ理解できると、一見関係ないことでも、分からなかったことが分かったり。。
で、こちらの文章での言葉が見え、勝新の体温が感じられて。。

「ああ、あぁ、そうか。。」
なんかそれしか言えない。。

でも、これは言わなきゃ。

それに気が付かせてくれたyomodaliteさんにホントに感謝。。

ありがとうございます。
Commented by yomodalite at 2011-06-04 23:13
mari-koさん、いつも励みになるコメントありがとうございます!

んっとに、磨璃故(エントリ違いだけど。。ヤンキーネームね)ったら、

「照れるぜ!」

「子どもへの愛」ホント、わたしも、何度も聞いてたのに、全然わかってなかったうえに「またかよ」ぐらいに思ってたりして、どれくらいスゴいことかがわかってきてから、毎日嗚咽レベルで何日泣いたことか。。。

あと、ひとりか、ふたりぐらい気づいてくれるように、もうすこしぶっ飛ばしてみるね。

そういえば、玉三郎の「ザ・スター」が初コメだったよね。。被災地で、玉置浩二の「田園」に涙する人が多いって記事を見たんだけど「田園」て曲だけじゃなくて、アルバムとして相当名盤だよね。MJとマーヴィン・ゲイの間に入れて何度も聴いたけど、やっぱり、すっごくイイ!!!って思った。
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by yomodalite | 2010-12-12 19:05 | エッセイ | Trackback | Comments(2)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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