昭和史の深層ー15の争点から読み解く(平凡社新書)/保阪正康

今年5月に出版された新書。
アマゾンに書評が一件もなくて驚いたのだけど、これは「良書」だと思います。

タイトルにある15の争点は以下。

1章 満州事変前後の国家改造運動
2章 2.26事件と新統制派
3章 日中戦争と現地解決.不拡大
4章 南京事件
5章 太平洋戦争とその歴史的本質
6章 独ガス、原爆、大量殺戮平気を許した論理
7章 北方四島、北海道占領を巡るドラマ
8章 敗戦と向き合うということ
9章 東京裁判が真に問うこと
10章 占領期に見る宰相の資質
11章 占領は開放化抑圧か
12章 強制連行の実態を考える
13章 沖縄戦の本質を見つめる
14章 慰安婦問題にみる戦場と性
15章 昭和天皇の歴史的役割
おわりに 日本人の意識はどう変わったか

いずれの争点も、それぞれ、熱のこもった本が何冊も出版されている内容ですが、昭和史研究で菊池寛章も受賞している著者だけに、各争点の議論すべてによく通じていて、新書のボリュームにふさわしい争点の簡潔なまとめ方がされている。

また各論併記による、争点の書き出しではなく、冒頭で、著者の考えが明確に示されている点や、大学関係の研究者にありがちな、文章の内容をできるだけ複雑にすることが、頭がイイことだと思っているような頭の悪そうな文章でなく、著者が日頃行っている、講演や、市民講座、カルチャーセンターなど、お客を前にしての講座が生きている、わかりやすい文章も希少。

ここで挙げられた争点に関しては、論者の幼児性ばかりが目につく不毛な論争に読めば読むほど、疲れがたまるものが多かったのですが、本書の、ここから始めれば...というような著者の姿勢には、意見に同意するしないに関わらず、議論のたたき台としても、また、多くの取材とデータ収集に裏打ちされた説得力にも、健全な精神が感じられました。
______________

「BOOK」データベース/昭和三十年代の「昭和史論争」を初め、これまで、昭和史をめぐっては様々な論争が繰り広げられてきた。今日でも、国を超えた歴史共同研究が進む一方、個別のテーマに関して、依然として対立点が存在する。これまでの論争は果たして本質的なものであっただろうか?15のテーマに関して、史実を整理し、より本質的な問題点を提示する。平凡社 (2010/5/15)





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Commented by sakaeko at 2010-08-03 08:57 x
昭和史知らないな~と思い「昭和史の深層」を買って読んでますが、難しい・・・まだ3章。1ヵ月かかりそう。
yomodaliteさんて教養もあり文才もあるから「笑いとエロ」の追求・調査もおもしろいんだぁ。尊敬(笑)
2005年のマイケルジャクソン裁判は500ページでも3日程で読めたのに、この本を読み出すと目が自然に閉じてしまうzzz...
Commented by yomodalite at 2010-08-03 14:12
まさか、この本を買う人がいたとは....(驚)そんなに奨めてないのに(笑)

私も、少し眠くなったり、めんどくさくなって、こんな本、主婦に読ませんな!しっかりしろよ!インテリ〜〜!!!って思うことが、しばしばある。
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by yomodalite | 2010-07-31 23:25 | 歴史・文化:美術 | Trackback | Comments(2)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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