映画『棒の哀しみ』監督:神代辰巳、主演:奥田瑛二

f0134963_18444964.jpg


『もどり川』で初めて出会った神代監督ですが、これは監督最後の作品。せっかく出会ったばかりなのに、もう「遺作」を観てしまうなんて残念なんですが、日本映画チャンネルの「神代辰巳特集」に間に合ったのはこれだけでした。

巨匠と呼ばれるような監督であっても、最後の作品とか遺作と呼ばれるものに、名作はないという印象をもっていて、あまり期待せずに見始めたのですが開始早々、カジノバーで、主演の奥田瑛二、桃井かおり、竹中直人という出演が続くと、早くもギブアップしそうになった(彼らがキライというわけではなく・・・あ、またかっていう感じですね。桃井、竹中はこれ以降の出番はありませんでした)。

その後、原作が北方謙三だとわかって益々どんよりした気分になると、映画の方も、舎弟の哀川翔とともに6畳一間のアパートに住む手下の元に命懸けの仕事を頼みに行くという展開にぴったりの、この時代の日本映画特有の、TVドラマから、更に光量を節約したような、陰影も奥行きもないビンボー映像が、どんより気分にさらに追撃ちをかける。

いつもグレーのスーツに、白いワイシャツ、地味なネクタイの奥田瑛二は、見た目、中堅サラリーマンのようなのだけど、組を任され、跡目が自分でないことに不満を感じているNo.3のヤクザで、元々弟分であったNo.2は、白竜が演じている。

奥田瑛二(役名は田中だったかな)には、高島礼子、永島瑛子が演じる2人の情婦がいて、女には銀座のそれなりの店を持たせているのですが、一応、組長である奥田瑛二の住まいはごく普通のマンションにしか見えない。

情婦2人以外にも、花屋の若い女をシャブ中にして売春させたり、若い衆を鉄砲玉にすることに抵抗はないものの、自ら刺されるという作戦も厭わず、また、その傷口も、自分で何度も縫い、血で汚れた床も自ら拭く。。。

『もどり川』では、個性派美人女優5人を激しく脱がせただけでなく、その全員を魅力的に撮り、主演の萩原健一ほか、男性俳優のキャスティングすべてが完璧だったことに驚いたのだけど、『棒の哀しみ』の出演者たちは、皆それぞれ、その個性どうりのいつもの演技を淡々としていて、主演の奥田瑛二は監督の「分身」であるかのよう。

役者としての奥田瑛二は、自分が役者であることを、妻にも家庭にも「犠牲」を強いるような「めんどくさい系」の男(=ほっとけない)で、およそ、映画に関わる男は、ほとんど「めんどくさい系」なのだけど、

この映画で、はっきりわかった監督の魅力とは、神代辰巳という男には、まったく「めんどくさい」ところが感じられないというところでしょうか。

自分の傷は自分で縫う。

神代監督は、この映画を、酸素ボンベを背負いながら撮ったとのこと。もう1回観たいとは、そんなに思わないけど、これは「遺作」の傑作ですね。生きておられるときに、その横顔をちらりとでも、拝見したかった。

☆☆☆☆(本当にハードボイルドな映画とは、本作のようなことかも。。)

[PR]
トラックバックURL : http://nikkidoku.exblog.jp/tb/13854014
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by yomodalite | 2010-05-31 18:51 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


by yomodalite