仮想儀礼(上・下)/篠田節子

仮想儀礼〈上〉 (新潮文庫)

篠田 節子/新潮社



都庁の職員でありながら、ゲームのシナリオライターを副業にしていた“正彦”は、オリジナル作品の依頼をきっかけに、ゲーム作家を本業とすることを決意、公務員を退職し、理解のない妻とも別れたが、出版詐欺にあい、何もかも失ってしまう。また、正彦に仕事を依頼していた“矢口”も会社をクビになり、仕事を失っていた。年齢がネックとなり再就職が出来ない2人は、事業として「宗教」を営むことを思いつく。。。

昨年末に出版された本書により、初めて篠田氏の作品を読みました。

ゲームのシナリオとして考えられた“宗教”に、はまって行く人々に対して、最後まで冷静さを失わない“教祖”桐生慧海(正彦)や、次第に金儲けより、生き辛さをかかえた女たちに共感していく矢口、また成功しながらも、宗教を必要とする経営者たち、天才ともいえる文学的才能をもちながらも、破滅の道から抜け出せない、作家・萩尾敬。

家族の問題に引裂かれた女たちも、いずれも、人物がよく描かれていて、長編にもかかわらず、ぐいぐいと読ませられてしまう、著者の器の大きさに圧倒されました。

探偵や刑事ではなく、途中から重要なキャストとして、ルポライターの安藤が登場し、マスコミの問題点をも浮き彫りにしている。信者の女の家族である、政治家の兄など、男たちの社会的地位や、職種による性格の描き分け方が上手いうえに、女たちへも、女流作家ならではの鋭い目線で、間違いなく楽しめます。

★★★★(古くささがあまりない社会派サスペンス!)

___________

【BOOKデータベース】(上巻)信者が三十人いれば、食っていける。五百人いれば、ベンツに乗れる—作家になる夢破れ家族と職を失った正彦と、不倫の果てに相手に去られホームレス同然となった矢口は、9・11で、実業の象徴、ワールドトレードセンターが、宗教という虚業によって破壊されるのを目撃する。長引く不況の下で、大人は漠然とした不安と閉塞感に捕らえられ、若者は退屈しきっている。宗教ほど時代のニーズに合った事業はない。古いマンションの一室。借り物の教義と手作りの仏像で教団を立ち上げた二人の前に現れたのは…。二十一世紀の黙示録的長篇サスペンス。


(下巻)スキャンダルの末、教団は財産を失う。しかし、残った信者たちの抱える心の傷は、ビジネスの範疇をはるかに超えていた。家族から無視され続けた主婦、ホテルで飼われていた少女、実の父と兄から性的虐待を受ける女性…居場所を失った者たちが集う教団は、次第に狂気に蝕まれてゆく。「カルト」の烙印を押された聖泉真法会。さまよえる現代の方舟はどこへ向かうのか—真の救済の在り処を問う、著者の新たなる代表作。新潮社 (2008/12)



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by yomodalite | 2009-11-24 17:56 | 文学 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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