秘密とウソと報道(幻冬舎文庫)/日垣隆

秘密とウソと報道 (幻冬舎新書)

日垣 隆/幻冬舎



自由民主党のように、現マスコミもすべて一斉に政権交代できないものか、と日々思っておりますが、気鋭のジャーナリスト、日垣隆氏は、メディアにどう斬り込まれたのでしょうか。

第1章 「正義」のイヤらしさ
元官房長官の鴻池祥肇氏の女性問題は何が問題なのか?かつての新聞は、現在のような薄っぺらい正義を振りかざす存在ではなかった。確認を手抜きする編集者。
特捜が扱う事件は、すべて「国策捜査」である。

第2章 他人の秘密は蜜の味
「秘密を暴露する」「広報する」「データベースを着々と積み上げる」、新聞記事をいうものは、この3つだけで98%が埋まってしまう。しかし、政府公報も警察発表も、そのまんまの記事は非常に多い。少し気をつけて見れば、新聞記事は「・・・という」だらけ。

第3章 スクープかフェアネスか
スクープを手に入れるため、ルール違反を犯すこと。社会正義のためなら泥棒しても許されるのか。。。
“からゆきさん”の息子から写真とパスポートを盗んだ、山崎豊子『サンダカン八番娼館』、警察の内部資料をコピーした、佐木隆三『復讐するは我にあり』、工場の中で知り得たことは、絶対口外してはならないという服務規律違反、鎌田慧『自動車絶望工場』、盗聴器を仕掛けた、朝日新聞「談合」キャンペーン。。。
後ろ暗い取材方法を奨励してきた新聞記者の「正義」を笠にきた傲慢な態度。

第4章 奈良少年調書漏洩事件
草薙厚子『僕はパパを殺すことに決めた』の問題点。本の中味は、八〜九割方は調書の引用。崎濱医師による鑑定書は、広汎性発達障害への逆差別。精神鑑定書の著作権は精神科医のもの。本書はその内容から草薙厚子著はありえない。
33年間、情報源を隠し続けた米ジャーナリスト。大統領にもFBIにも萎縮しないアメリカ民主主義。

第5章 「週間新潮」第誤報事件
朝日新聞阪神支局襲撃を実名で告白した手記を掲載した「週間新潮」が陥った罠。
「空想虚言」の特徴。官僚や警察が記者クラブで発表した情報をそのまま流している新聞記者が、週刊誌に「ウラを取れ」と偉そうにいうこと。

第6章 この世はウソの地雷原
ウソには5つの種類がある。社交辞令、皮肉、その場の雰囲気、特定組織や自分の防衛本能、世論操作。「不自然だから」とかえって信じてしまう心理。「犯人隠匿罪」と「大スクープ」のせめぎ合い。

第7章 足利事件ー誰が捏造したのか
「精液のDNA型が一致」と発表した科捜研は、当初、付着精液が微量すぎるため鑑定は不能と辞退していた。その後しぶしぶ鑑定を引き受けると、付着していた精子の数が「頭部のみ3個」からいきなり「一万五百から一万二千個」に増えた。
著者はかつて『論座』で、この事件を冤罪と断定したところ、科捜研から呼び出しを受けたが、データの開示もなく、試料はすべて使ったなど、科学的証拠を一切示されず、今後は情報を一切出さないという脅しをかけられた。
お上が「DNA型が一致した」と言われれば、すんなり納得するのが日本の新聞ジャーナリズム。

第8章 名誉毀損ー高騰して何が悪い
なぜ賠償額が高騰したのか。高騰して何が悪いのか。日本の法律家が名誉毀損の損害額の算定に着手したのは2000年前後。きっかけは池田大作氏への度重なるスキャンダル報道。空想虚言記者は大勢いる。デタラメ報道の被害者。。。清原、龍円愛梨・・・言論弾圧と言い続ける発想は不健全。

第9章 リスクとチャレンジと謝罪
西山事件(外務省機密漏洩事件)の問題点。西山記者は、外務省審議官付きの女性と男女の仲になることで情報を得た。女性は外務省を退職し、離婚。警察の取調べの際も、西山氏からも守られることはなかったが、事件は、澤地久枝、山崎豊子らにより本も出版され、西山氏はその後も講演会などで活躍した。

松川事件(福島県の脱線列車事故)では、国鉄労働組合、東芝労組、共産党に容疑がかかり、20人が逮捕され、17人が有罪判決を受けた。検察は、被告人の無罪を証明できる「諏訪メモ」を隠していたことを知った、毎日新聞の倉嶋記者は、福島地検の職員の女性からこっそり資料を得てスクープを書き、その後、その職員と結婚している。死刑判決を受けた4人、実刑判決を受けた13人を救わねばならないという使命感に燃え、戦後史に残る冤罪事件をひっくり返し、情報を受けた女性とも結婚した、松川事件のスクープこそ、後世に語り継ぐべき。

謝罪に絶対必要な3つの要素ー謝意を誠実に表明すること。失敗に至る経過を詳しくそのつど説明すること。償いをすること。その3つがあまりにも実現困難すぎる場合、そのような失敗をおかさないことが如何に究極の保身であるかを、あらかじめ心得ておくことが肝心である。

ジャーナリズムの反対語は「マンネリズム」。今の新聞や雑誌には“非マンネリ”に挑戦するという自覚があるのだろうか。

第10章 有料ジャーナリズムの終焉?
総合週刊誌もマンガ雑誌も、部数の落ち込みが激しい。多くの購読者がいた時代、広告が潤沢に入っていた時代と同じモデルのままでは、生き残れない。少部数で充分ペイできている媒体も存在する。悲観するにはまだ早い。

以上が内容の簡略メモ。
ジャーナリズムの問題点へは大勢の人が共感すると思いますし、目新しいものではありませんが、著者ほどの鮮やかな手腕では誰も本にすることができない、といった内容の本。共感できなかったのは下記ぐらいでしょうか。。。

第1章の最後、土木工事の口利きをする見返りに多額の金を受け取る。そういうことを許してはいけない、と検察は考えている・・・から小沢一郎公設秘書逮捕というのはどうでしょう。小沢一郎は、田中角栄の正統な継承者かもしれませんが、土建政治を継承してきたのは、与党に居続けた自民党議員の大勢であって、当時野党であった小沢に対しての容疑としては、タイミング的にもおかしい。

第4章 大統領にもFBIにも萎縮しないアメリカ民主主義は些か言い過ぎ。ボブ・ウッドワード氏は、なにか特別に守られているように思いますし、草薙氏と比較する対象としてふさわしくない。

___________

【BOOKデータベース】鑑定医が秘密をバラす相手を間違えた奈良少年調書漏洩事件。「空想虚言癖」の典型的パターンに引っかかった「週刊新潮」大誤報。賠償額が高騰する名誉毀損訴訟。数々の事件で、メディアが一線を越えるか踏みとどまるかの分かれ目は、秘密の手に入れ方・バラし方、ウソの見破り方の巧拙にある。それを「言論弾圧」「取材力の低下」としか語れないのは、ただの思考停止、メディアの自殺行為だ—秘密とウソというユニークな視点から、「ジャーナリズムの危機」に斬り込む挑発の書。幻冬舎 (2009/07)



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by yomodalite | 2009-10-20 15:58 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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