廃墟建築士/三崎亜記

廃墟建築士 (集英社文庫)

三崎 亜記/集英社

undefined


タイトルに惹かれて、はじめて三崎亜記氏の作品を読みました。

建物をテーマにした4つの短編集は、どれもシュールにして、純文学の香りがするものばかりですが、一番後に書かれている『蔵守』が、もっとも完成度が高いと感じました。

ちょっと毛色が変わった小説を読みたいと思っている方に。

『七階闘争』 生後まもない赤ん坊を残して主婦が惨殺、いじめを苦にした中学生の飛び降り自殺、火遊びが発端になった火事で幼い兄弟が犠牲になり、独居老人は腐乱死体となって発見される。。それらの事件に一つだけ共通していたのは、それが全てビルの七階で起こったという点。市は七階を撤去しようという決議をし、七階に住む僕は、同僚の並川さんに誘われて反対運動に参加することになったが…七階撤去反対住民たちは言う。「世界最初の七階は、地面の上に直接造られていたそうですよ」

『廃墟建築士』 私が廃墟に魅せられたのは、一つの廃墟との運命的な出会いがあったからだ。建築を総指揮したワイクマール卿の「廃墟を感じるには、時間軸と平面軸の尺度を自らの内に持つことである」という理念は、氏が故人となった現在でも二百年以上経った今日でも、厳然と守られている。
「廃墟とは、人の不完全さを許容し、欠落を充たしてくれる、精神的な面で都市機能を補完する建築物です。都市の成熟とともに、人の心が無意識かつ必然的に求めることになった「魂の安らぎ」の空間なのです。

『図書館』 私が駅から程遠い片田舎のこの図書館に来たのは、夜間開館の準備をするためだった。本が“野性”に戻った姿を皆に見せるためには、図書館“調教”が必要なのだ。

『蔵守』 私は、自分の機能のほとんどを「守る」ことに限定して、ここに存在し続けています。意識を「私」として認識される「建物」の形に同質化させ、隅々まで守る意志を張り巡らせています。
_____________

【BOOKデータベース】ありえないことなど、ありえない。不思議なことも不思議じゃなくなる、この日常世界へようこそ。七階を撤去する。廃墟を新築する。図書館に野性がある。蔵に意識がある。ちょっと不思議な建物をめぐる奇妙な事件たち。現実と非現実が同居する4編収録の最新作。集英社 (2009/1/26)



[PR]
トラックバックURL : http://nikkidoku.exblog.jp/tb/12131828
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by yomodalite | 2009-10-15 22:08 | 文学 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


by yomodalite