落語論 (講談社現代新書)/堀井憲一郎

落語論 (講談社現代新書)

堀井憲一郎/講談社



東京中央区に住んでいると言うと、23区在住者にすら驚かれることがあります。「住むっていうイメージないよね」ということらしいのですが、東京のあちこちに住んだ経験から言えば、こんなに住みやすいところはないです。

理由はいくつもあるんですが、そのひとつは、

歩いて行ける落語会が多いこと。

都心にして、下町文化が残っている中央区は、落語の住人になれるような気がするんですね。まあ幻想のようなものなんですが。

でも、停滞する経済、成長期を終えた日本で「幸せに過ごす」もっとも簡単な方法は「落語を聞く」ことではないでしょうか。

では、そんな落語を聞いて幸せになるのに「落語論」て必要なんでしょうか。それは、ほとんど読んでいない私にはわかりませんが、堀井氏は現代の落語にとって確実に必要な方だと思います。

それは、年間400席以上の落語会に足を運んでいることがスゴイのではなくて、それほどまでに落語に浸かりながら、オタク的分析や分類に陥っておらず、“ずんずん調査”で名を挙げたホリイ氏ですが、落語に関しては、慎重にそれを避け、本質に迫ろうとしているからです。

第一部、本質論では、まず、落語がライブとしてのみ存在することが説明されています。落語に限らず、生が一番であることは、様々な表現が主張しそうなことですが、落語ほど、ライブと映像作品が異なるものも珍しいと、私もライブで見るようになってから気付きました。

例えば、大好きなミュージシャンのライブに行って感動し、帰宅後CDを聞いたり、DVDを見たりして、その感動が薄れることはありませんが、落語会で聞いた噺に感動して、同じ噺を、音源や、映像で確認しても、会場での面白さが甦ることはないんですね。

もうそれは、不思議なくらいまったく別物で、他のお笑い、例えばレッドカーペットに出演している芸人なら、TVでの数分間のお笑いと、単独ライブでは質は違いますが、両方面白いということがありますが、落語に関しては、圧倒的にライブでないと全く面白さが理解できない、客として、その空間を共有して、初めて面白いという「芸」なんですよね。

第二部、技術論では、若い演者へ向けて、落語は歌であり、音を出すことを重要視し、人を声色を使い分けるのではなく、リズムと強弱で描きわけることや、また、素人が通ぶって使いたい言葉の筆頭である「間」の意味について。

第三部、観客論では、落語が好き嫌いからしか語れないことや、聞き手が常に参加者であることを主軸に、メモをとること否定し、「落語は、安心するために聞く」という目的から外れない“観客道”が説かれています。

落語に関して著作が多い著者だけに、『落語論』という大上段のタイトルは、期待値が相当上がっている読者も多いかもしれません。講談社現代新書でも、昨年の『落語の国からのぞいてみれば』に続いて2冊目になりますが、内容はまったく異なり、前書は落語教養+ガイドブック、本書は本質論。

あとがきで著者も書いているように、42日間という急ぎで書かれたものらしく、著者の落語論決定版というような完成度ではないかもしれません。それでも、落語と言う生ものを最もよくわかっている著者にしか書けない、本質に最も近づいた「傑作落語論」だと感じました。

☆「情報考学 Passion For The Future」

【目次】
第1部 本質論
・ライブとしてのみ存在する
・意味の呪縛を解く
・落語はペテンである 
・客との和を以て貴しとなす

第2部 技術論
・落語は歌である
・音の出し方のポイント
・「間」が意味するところ
・ギャグとテンポ
・うまさの普遍的な基準はない

第3部 観客論
・好き嫌いからしか語れない
・落語の多様性
・嫉妬という名の原動力
・集団で同じ方向にトリップする
・落語が教えてくれたこと
____________

【内容紹介】ファン待望、ホリイの落語入門がついにお目見え!なぜ同じ噺を繰り返し聞いても飽きないのか。うまい噺家はどこがどうすごいのか。当代一、落語会・寄席に通い、噺家すら恐れる著者だから書けた渾身の落語論。 講談社 (2009/7/17)



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by yomodalite | 2009-10-06 14:00 | お笑い・落語 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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