雨ン中の、らくだ/立川志らく

雨ン中の、らくだ (新潮文庫)

立川 志らく/新潮社




タイトルは本当は『雨の中のらくだ』だったのですが、談志師匠に題字を頼んだらこうなったそうです。志らくファンである山本蓉子氏による装画も素敵な本書ですが、果たして『赤めだか』を越えられたのでしょうか?

まえがきによれば、本書はもともと依頼された時点では「談志音源全集」だったが、そのあまりの大変さから企画変更。時を同じくして出版された『赤めだか』への談志の感想が、よく書けてはいるものの、俺が教えた落語のことや「イリュージョン」「帰属論」について書かれていない。それならば、私(志らく)が書こうと思い立つ。

全18章からなる「志らくの談志論」。志らくが好きな談志の落語と、志らくの青春物語。隠れタイトルは「談志と志らくと、時々、高田文夫」にして「青めだか」とは、著者のことば。

二番煎じ?、二匹目のドジョウ? 悩めるかつての天才、志らくの現在になんとなく物足りなさを感じている人は多いと思うのだけど、復活への期待をしている人も多いはず。談春なら次回公演のチケット予約に躊躇ないけど、志らくは1年後の方がいいかも、と思ってしまう。そんな状況を志らくさんは、ご自身ではどう思っているのかなぁ〜なんて、わたしと似たような心情の方は、本書をぜひお読みください。

冒頭での狂人宣言で、またか。。という不安。自慢も、毒舌もチャーミングさにちょっぴり欠ける志らくさんは「才人」ではありますが「狂気の人」キャラは似合わないし、レベルの低いノリツッコミ文章も、談春の全編とおして、古典落語の噺のような文学としての完成度も見られないのですが、談志に興味のある落語ファンなら、『赤めだか』より、面白く読めるかもしれません。

だって、冷静に振り返ってみれば、『赤めだか』だって充分異常な師弟愛なんですが、『雨ン中のらくだ』は、冷静に振り返らなくても「異常」なんですよ。

落語家が「狂人」になります。と言ったら、落語の狂人になること。と観客は理解しますけど、志らくさんは、落語に狂うこと=談志に狂うこと。になっていて、46歳の志らくさんが、今それでいいのかどうかは、神のみぞ知るですが、志らくさんは、談志が死んだら、談志を襲名したいんでしょうね〜。読み進んで行くと、談志の凄さを描いている部分は、秀逸なんですが、それを見つめる志らくさんの眼が異常というかまさに「狂気」!

しかし、やっぱり、これは志らくさんにとって、重要な未来への宣言かもと思える部分もあります。第十五章「よかちょろ」では、映画の失敗についても、意外と素直に反省されているようですし(笑)。。。うっかり観てしまった方も少しは気が晴れるかもしれません。

個人的には、晩年のフランキー堺、『幕末太陽伝』の佐平次と、談志の『居残り佐平次』について書かれた第七章『居残り佐平次』に共感し、新橋演舞場での談志・志の輔親子会での『金玉医者』について書かれた第十七章も、実際に観た舞台がありありと思い出されました。

最終章の第十八章『芝浜』では、談志の「芝浜」はハッピーエンドではなく、ラストで男がまた酒に溺れる、憐れで弱い男と女の人生の始まりが見える、それこそが「落語」だ。という話が感動的です。結局また酒に溺れて行く亭主に後悔しながら、別れられない女房。。。芝居はキライなんですが、志らくさん、これ芝居にしませんか?酒井法子を女房役で!!

★★★★(談志の音源も、もっと聞きたくなりました!古典落語の解説としても◎)
___________

【目 次】
まえがき
第一章 「松曳き」
第二章 「粗忽長屋」
第三章 「鉄拐」
第四章 「二人旅」
第五章 「らくだ」
第六章 「お化け長屋」
第七章 「居残り佐平次」
第八章 「短命」
第九章 「黄金餅」
第十章 「富久」
第十一章 「堀の内」
第十二章 「三軒茶屋」
第十三章 「やかん」
第十四章 「天災」
第十五章 「よかちょろ」
第十六章 「源平盛衰記」
第十七章 「金玉医者」
第十八章 「芝浜」
あとがき

【内容紹介】志らくによる談志。壮絶なる師弟の物語。人気落語家・立川志らくが、師匠である立川談志を、談志落語の代表作ともいえる十八席を軸にあますことなく活写。「落語とは何か」「落語家はどうあるべきか」という談志の問いを自らに引き受けるべく書き下ろした、立川志らく渾身の一冊です!!太田出版 (2009/2/19)



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by yomodalite | 2009-08-24 23:16 | お笑い・落語 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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