マイケル・ジャクソン観察日誌/エイドリアン・グラント

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マイケルが亡くなって、1ヶ月以上経ちました。

生前熱心なファンでなかったくせに、この間、私のようにマイケルに夢中になっていた人は多いと思うけど、彼の死を残念がり、残された作品への賛辞で溢れていた現象も少し落ち着いたところで、ひっそり追悼したいと思います。

本書は、マイケル・ジャクソン公認ファン雑誌の編集長である著者が、1958年8月29日の誕生日から1995年9月24日までのマイケル観察日記を箇条書きにしたもので、訳者により1997年の夏のヨーロッパツアーまでが加筆されています。

(この本は『マイケル・ジャクソン全記録』の初版ヴァージョンです)

読了したのは、1ヶ月前ぐらいなのだけど、なかなかブログアップできませんでした。

生前のマイケルに対して、誤解が多かったことに衝撃を受けつつも、死後の賛辞一辺倒への急激な変化にも乗せられたくない。まずは、私の中で彼に抱いた謎に決着をつけてからという思いでした。

そもそも、わたしのマイケルへの最大の誤解は、彼の容貌が「人間離れ」していった時期の作品がつまらないと思っていたことでした。

しかし、その誤解は作品に触れることですぐに解消されました。2001年10月に発売された「Invincible」も、1997年の「Blood On The Dance Floor/HIStory In The Mix」もマイケルが亡くなってから真剣に聞き直して、そのクオリティに驚かされたのだけど、

もっとも衝撃的だったのは、ニューヨークでソロ30周年を祝うコンサート「Michael Jackson : 30th Anniversary Celebration, The Solo Years」の再放送を観たときでした。

前半は、デスティニーチャイルド、アッシャーなど、今をときめくスター達が次々と、特別観覧席にいるマイケルの前でショーを行なっていき、マイケルの側には、エリザベス・テーラーや、マコーレー・カルキンも同席し、遠目に見ても人間離れの激しい彼の顔は、そんなに近くで見て大丈夫なの?カルキン!と心配したくなるほどでしたが、マイケルは一向に構わぬ様子で、まるで「異形の王」のように存在していました。

ところが後半、エリザベス・テーラーの紹介により、再結成したジャクソンズとして、マイケルが登場すると、今までのスター達は一体何?と言うか、比較することがバカバカしいほどの圧倒的な輝きを見せ、マイケルだけでなく、兄弟たちすべてがまったくブランクを感じさせない素晴らしいパフォーマンスで、会場の老若男女すべてを熱狂させる。

ヒット曲に事欠かないジャクソンズとはいえ、メンバーすべてが懐かしさではなく、今現在これほどまでに輝いた演出が実現できたことに、本当に驚かされたのだけど、その驚きがまだ覚めやらない舞台に、今度はマイケルが1人で登場する。ジャクソンズのときよりずっとシンプルなブルーのシャツで。。。

もうここからは、口をぽかんと開けたままで観ていたかもしれない。このときの「Billie Jean」の素晴らしさを言葉で表現できる人がいるだろうか。何度観ても色褪せないとは、よく言うけど、このときの彼の姿は、観るたびに、新しいマイケル狂を作り出していくと思う。すでにある“伝説”の遥か上をいくレベルを、30周年記念という、功労賞のようなコンサートでやり遂げるスゴさ!

この伝説的なコンサートの翌日にあの“アメリカ同時多発テロ事件”が起こったことは、彼を攻撃し続けた相手の正体と無関係ではないでしょう。間違いなく奇跡の復活を遂げるはずだったマイケルのその後の活動はマスコミによって更に無視されることになる。

それにしても、どうしてマイケルは、不可解な整形を繰り返したと思われるような精神状態で、これほどクオリティの高い作品を生み出し続けられたのか?

「白人コンプレックス」
「女性になりたかった」

上記2つの意見はすでに真実であるかのように言われています。確かに、白人より白い肌になり、二人の妻も白人で、子ども達も白人のように見える。30周年コンサートでも、エリザベス・テーラーや、ライザ・ミネリは彼の整形の見本になっているようにも感じました。それでも、あの鼻は白人ではないし(とにかく人間が見本ではない)、子どもの養育権を実の母親にしたことは理解できるとしても、どうして3人の白人の子どもたちの後見人が、黒人のダイアナ・ロスなんでしょうか?

女性願望についても、最初の結婚前ぐらいから、かなり赤味のある口紅もつけるようになったり、30周年記念コンサートでの、まったく年をとっていないライザ・ミネリと、マイケルの整形には似通った点が感じられたが、それなら何故「バッド」の頃に入れた男性らしさの象徴ともいえるアゴの中裂がそのままなんでしょうか?

彼はイイと思ったものすべてを自分に取り入れることに、ひたすら一生懸命で、まるで、「Black or White」でのモーフィングのように、自らの容貌に非常に自由な感性でいたかったのでしょうか。

黒人でもあり白人でもあり女でもあり男でもある、そういう存在になりたかった彼の尋常でない一途さは、不世出の天才ならではですが、彼の「人種や、肌の色にこだわっていない」と言う発言は、一般的に日本人が考えるほど気軽な発言ではありませんでした。「世界平和」というのも同様に危険な発言です。マイケルの場合は発言だけでなく、その活動への熱心さ、影響力の凄まじさが、あれだけのバッシングを生んだのでしょう。

本書を読むとよくわかるのですが、子どもへの寄付活動は、その額も回数も半端ではありません。マイケル1人で、これほど熱心な寄付活動をされては、大手・老舗の宗教関係者はどう思ったでしょう。

アニメキャラの鼻、舞台女優の眼、男らしい顎。。。人間を見本としないアニメの鼻だけが、今の形成外科医のテクニックにないため、なかなか思うように行かなかった。。。彼が自分が受けた手術の回数を「鼻は2回」と言っているのは、デザインの変更のことで、黒人風の広がった鼻を細くまっすぐにしたのが1回。アニメ風に変更したのが2回目ということなら理解できます。鼻先の両側に穴があることなど、彼には問題ではなかったんでしょう。

彼の形成手術への傾倒は、女性願望でも人種でも醜形でも、およそ通常のコンプ解消といった文脈で語られるものではないことは明らかだと思います。ただ、彼は年をとることだけは、きっと嫌だったのかもしれません。

残念ながら(?)本書には、○月○日、××形成外科に行く。なんていう記述はありませんが、マイケルのパブリックな歴史のすべてをかなり忠実に追うことができます。彼の作品を見れば、これほどまでに永く超一流の創造期間を保つことができたアーティストはいないということがよくわかりますが、「scream」「You Are Not Alone」や「They Don't Care About Us」など、幼児虐待事件の凄まじい逆風のころに、これほど完成度の高いPVを制作していたなど、改めて彼の精神力の強さに、驚愕せずにはいられませんでした。

また、マイケルの死因ともされている鎮痛剤中毒。デメロールという歌詞が登場する「Morphine」は、1997年発売のアルバム「ブラッド・オン・ザ・ダンス・フロア」の2曲目に収録されていますが、その4年前の1993年の11月12日に鎮痛剤中毒の治療に専念するために、ツアーを途中でキャンセルすることを発表しています。

鎮痛剤中毒発表から16年。スターから、とにかく金を毟り取ろうとする大勢の人々、わずか5週間で750万枚も売れた『ヒストリー』の成功を無視したマスコミ、そして、その作品を宣伝するよりも、妨害しようとしたSONY。。。あまりにも巨大に膨れ上がった金の亡者と、世界を戦争状態にしておきたい勢力に囲まれながら、これほど永く、そして力強く戦ったアーティストはもう2度と現れることはないでしょう。

彼は、アメリカが生んだ最大のスターであるだけでなく、神にもっとも近づいた人間だったと思う。

☆鼻、眼、顎の変化にこだわっていますので、白班症、全身性エリテマトーデス(全身性紅斑性狼瘡:SLE)の影響に関しては、美容整形の理由に含めませんでした。

追記(2009.12.7)

彼の顔へのこだわりについて、現在は少し異なる感想を抱いています。私は、完璧主義者である彼が目指した“顔”がどういうものだったか?にとても興味があったのですが、むしろ、彼はそこにはあまり興味がなかったのではないかと思うようになっています。

特に、鼻梁がどんどん細くなっていった理由は、彼の美的な“こだわり”ではない可能性に思い至り、「マイケル・ジャクソンの顔について」というエントリを書き始めることにしました。

____________

【BOOKデータベース】本書は、イギリスのマイケル・ジャクソン公認のファン雑誌オフ・ザ・ウォールの編集長である著者が、マイケルの歩みを極めて丹念に調査し、それを日付によって時系列で並べた詳細な“観察日誌”である。何年何月何日にどこで何をしたか。あるいは、何月何日にどの曲がチャートに入り何位まで上がったか。何月何日にどの国のどの都市で公演をしていたか、などが非常にわかりやすいスタイルで記されている。マイケルの歩みを知るには非常に便利な、資料性の高い著作である。

インタヴューや声明からの抜粋も収録されていて、彼の生の言葉が時系列に沿ってまとめられたという意味でも、非常に貴重なものである。 小学館 (1996/12)





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Commented by tica at 2009-10-09 00:16 x
初めまして、彼の死後ファンになった者です。
エイドリアングラントを検索していて、ここに辿り着きました。

非常に引き込まれる素晴らしい文章に、感動しました。
マイケルに対する見識の深さに脱帽です。
「アニメ鼻」という見方は斬新でした。なるほどと納得できます。

私は先日、「A VISUAL DOCUMENTARY THE OFFICIAL TRIBUTE EDITION」を買いました。
恐らく、内容は「観察日誌」と同じものですよね?
英語でなかなか読み進められないのですが、分かる所から読んでます。

またお邪魔させて頂きます(^^)
Commented by yomodalite at 2009-10-09 10:18
ticaさん、はじめまして。初めてのマイケルファンの方からのコメントで嬉しいです。それと私もミスチル嫌いでスピッツ好きです。

「A VISUAL DOCUMENTARY」はこちらの原書ですが、“OFFICIAL TRIBUTE EDITION”は1958-2009で、2008年8月28日Good Morning Americaの電話でのインタビューも掲載されているので『観察日記』より大幅に加筆されているようですね。表紙も素敵だし、英語苦手だけど私も買いたくなってきました!

アニメ鼻の件は、マイケルがアニメ好きでポール・マッカートニーとアニメ見放題していた。というエピソードから、『ヱヴァンゲリヲン:破』(http://nikkidoku.exblog.jp/11482533/#11482533_1)を見て、確信したんです。本当にマイケルが一番好きだったアニメは何だったのかなぁ。
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by yomodalite | 2009-08-07 15:59 | マイケルジャクソン書籍 | Trackback | Comments(2)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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