江戸っ子芸者中村喜春一代記/中村喜春

文庫 江戸っ子芸者一代記 (草思社文庫)

中村喜春/草思社



前々から読みたいと思っていた伝説の芸者、喜春姐さんの一代記。著者が90歳で亡くなってから5年後、ようやく出会うことができました。

初版は1983年に草思社から出版され、その後朝日文庫から“青春編”“戦後編”“アメリカ編”として全3冊出版されているのですが、残念ながら現在は在庫切れの模様。

中村喜春さんと言えば、英語が達者な芸者として、来日した海外セレブを虜にし、外交官と結婚後はインドで、和製マタハリとして活躍。その後アメリカに渡ってからは、大学で日本文化を講義するなどの活躍をし、NHKのドラマや、SmaSTATIONでも取り上げられ、芸者に興味津々なわたしはかなり期待して読んだのですが、どういうわけだか、あまり面白いとはおもえませんでした。

執筆時、すでに70歳の喜春姐さんは、語り口が実に若々しく、まさに青春時代に戻って書いているようで、現代にはわかりにくい用語などの説明も、堅苦しくなく説明されていて読みやすいのですが、医者の娘として銀座に生まれた娘が、実家の没落も借金もなく芸者になったことの説明が、ただ本人が好きだったからと言う理由だったり、

名だたる有名人や時の権力者の名前がたくさん登場し、可愛がられた思い出が語られていても、すべてが無邪気なお客自慢の域を超えたものではなく、現代の水商売との流儀の違いについても、基本的には、現代の銀座マダムの成功物語とさほど変わらない。

最後の芸者の姿を期待していたんですが、実際は新しい時代の先駆けだったということで、それは痛快な物語なのかもしれませんが、とにかく“芸者”ではなく、デヴィ夫人の先輩モデルの姿だったという違和感でしょうか。自分のスタイルで時代を駆け抜けた“芸者”の姿を期待していただけに、既存の権力志向が気になったのかもしれません。

お客のプライヴァシーも、喜春姐さん自身のプライヴァシーもしっかり守った上で書かれているためか、人間ドラマに乏しく、「江戸っ子芸者」の物語を期待していたのだけど“青春編”を読む限りは、新時代を「語学」を武器に駆け抜けた女の物語が主で「芸者」は、そのスパイスとして、効果的だったという感じでしょうか。

かなり読書欲は減じましたが、この後「戦後編」「アメリカ編」も、いつかは読んでみるつもりです。

「千夜千冊」第三百六十九夜【0369】2001年8月31日
中村喜春『江戸っ子芸者一代記』全3冊
1983・1984(戦後篇),1987(アメリカ篇) 草思社
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0369.html
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【BOOKデータベース】昭和初期、知性と江戸っ子気質で政財界や外国要人の人気を博した新橋芸者の、波乱に満ちた一代記シリーズ。1956年の渡米後はオペラのコンサルタントになり、今も活躍中の喜春さん。青春編は生い立ちから芸者時代、外交官との結婚、インド赴任、開戦による収容所生活、そして帰国までを綴る。朝日新聞 (1993/04)

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by yomodalite | 2009-07-24 17:21 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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