ゴーマニズム宣言SPECIAL天皇論/小林よしのり

ゴーマニズム宣言SPECIAL 天皇論 (小学館文庫)

小林 よしのり/小学館




最近では『おぼっちゃまくん』をパチンコに売ったことで話題のよしりんですが、果たしてそれは、80歳でも、持病があっても入れる“外資系保険”のCMに出演するタレントと比べて、それほど批判されることなのか、どうなのか、私には判断がつきかねますが、本書で、繰り返し登場している原武史氏の『昭和天皇』への言及には溜飲が下がりました。

『滝山コミューン1974』で、小学生時の記憶と現在の視点との混在を明瞭化できなかった原氏は「事実」に対して、学者(?)が持つべき重要な資質に欠けているように思います。原氏は新聞記者出身ですが、その職業の人によく見られる傲慢さで、ジャーナリストとしてなら時代の隙間ユーズに答えられる方とは思いますけど、歴史学者として、天皇を語れるような器の方とは思いませんでした。

ところが、その後、原氏が『大正天皇』『昭和天皇』など次々に出版し、毎日出版文化賞や司馬遼太郎賞など悉く受賞していることを知って大変驚きました。

大学でと天皇を研究している人に頭がイイ人はいない。というのは、天皇に関して、数十冊ほど読んできた感想ですが(カテゴリ「天皇・皇室」に20冊ほど収納)、天皇擁護派には、小室直樹、山本七平といった碩学がおられますが、天皇批判派は、揃いも揃って戦争時代の恨みつらみを親にあたるような幼児性に、いつまで経っても気付かない情念の人ばかり。昭和天皇以上に、理系脳の人は1人もいません。

それでも戦中に生まれた世代なら、そのアノミーも致し方ないかと同情もできますが、原氏は1962年生まれにも関わらず、天皇の実像へのイメージ支配が強すぎて、事実に、勝手な感想を付け加えることに疑問を抱かないのは『滝山コミューン』と同様で、個人史の範疇なら、許せても、一国の歴史にそのような態度でいいのかと思っていました。

しかし、現在日本の学者社会は、これで権威と給金がもらえるのですから、小林氏のように、出版だけで何人ものスタッフに給料を支払って、尚かつ、その権威と闘うだけの大衆性を獲得するような内容で、出版部数をも兼ね備えなくてはならない。そんな厳しい闘いに、正義のためなら餓死せよ!というような批判をできる大人がいることが不思議です。

本書は、個人主義者であった著者が、天皇への敬意を獲得していった個人史から始まっています。現在の日本の教育では、学校で天皇について教えられることは少ないので、一家に一冊あっても良いのでは?

原氏への不自然な報償を考えると、それぐらい売れてから批判したい本です。

◎参考書籍

『滝山コミューン1974』/原武史
『昭和天皇』/原武史

小室直樹の天皇本
・『「天皇」の原理』
・『天皇恐るべし—誰も考えなかった日本の不思議』
・『昭和天皇の悲劇—日本人は何を失ったか』

山本七平の天皇本
・裕仁天皇の昭和史—平成への遺訓-そのとき、なぜそう動いたのか
・昭和天皇の研究—その実像を探る
・昭和天皇全記録
____________

【内容紹介】戦後日本人が初めて天皇を知るときが来た!「天皇は神なのか」「宮中祭祀とは何か」「戦争責任はあったのか」誤解と偏見だらけの天皇観を正し、雅子妃や皇位継承をめぐる現代皇室の問題点にも鋭く切りこむ、最高の「天皇入門書」登場。
今上天皇、美智子妃、昭和天皇をはじめ皇室の知られざる秘話の数々に、驚きと感動が止まらない。大反響のSAPIO掲載分に描き下ろし200ページ超を加え、天皇陛下ご即位20年、天皇皇后両陛下ご成婚50年の年に放つ、著者渾身のシリーズ最高傑作。小学館 (2009/6/4)

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Commented by sakura-kanade at 2009-06-18 08:40
こんにちは!
この本も、買おうかどうしようか、迷っているところでした。
「著者渾身のシリーズ最高傑作」とまで言われているから
買おうかな、と思っております。
Commented by yomodalite at 2009-06-18 09:34
意外ですヽ(〃^-^)/。この本は読むなら買い!続編、続々編も出版した方がいい内容なので売れた方がいいですね。あと天皇関係はちくま新書の『天皇がわかれば日本がわかる』がオススメです。それからデザートに宮木あや子さんはいかがですか?
Commented by shintaromaeda at 2010-10-29 18:21
私も天皇論は図書館で借りて読みましたが、我が国にとって皇室は必要不可欠であることを再認識した一冊となりました。SAPIOのゴー宣暫(しばらく)によると12月に続編が刊行されるとのことでそちらの方も楽しみにしております。
Commented by yomodalite at 2010-10-29 19:23
shintaromaedaさん、コメントありがとうございます。
去年、この本を読んだときも、小林氏の本は、久しぶりでしたし、SAPIOも読んでいないので、現在も「天皇論」として、連載が続いていたことに驚きました。続編に期待と、当時書いていましたが、正直、難しいと思っていました。現在の連載が、どのような方向に向かっているのかも、まったく存じませんが、読んでみたいと思います。情報ありがとうございます。
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by yomodalite | 2009-06-17 14:43 | 天皇・皇室 | Trackback | Comments(4)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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