きもの春夏秋冬/山下悦子

きもの春夏秋冬

山下 悦子/平凡社



こちらは、信頼する女装家 三橋順子氏の「順子の好きな着物エッセイ」での紹介により読んでみました。

著者は1929年生で大塚末子きもの学院院長秘書を経て独立し、きもの教室や裏千家茶道教室を主催しているきもの研究家。フェミニズムの人とは別人です。

今のきものの衰退の元凶ともいえる、着付け教室と茶道教室を両方主催してきた著者の着物への想いが詰まった一冊。

著者が75歳のときに出版されたものですが、読了後に2004年出版と気づいてちょっと驚くほどクラシックな本です。

巷の大手着付け教室や、呉服屋の見識の無さなどを批判的に書いている部分があるのですけど、着付け教室が、着物の権威者として「お洒落」の審査員化していることの野暮に関して、自らには思い当たるところがないようで「結婚式に黒喪服で」の新聞への抗議など、どっちもどっちというか。。

女の衣服や靴に対しての思いは、今も昔もというところはありますけど、特に着物となると、その執念は暗く深みが増していくところがあります。

深すぎて「お洒落」じゃなくなっていった「きもの」、もてなしの心や遊びがすっかりなくなってしまった女たちばかりの「茶道」...著者には「道」はあっても「楽」が感じられない。「道楽」じゃなくなると、なぜか「反知性」の世界になっていくようです。

本書に流れる怨念のような感性をスルーして読まれることをお奨めします。

【内容メモ】

着手は乙姫さま
浅草鳥越の呉服屋で目に留まったきもの。披露宴の受付用と納得し、高額に目をつむり手に入れたそれは、玉糸紬の白地に深い藍の小紋。一幅に四つ並んでくり返される逆波の間隔は三寸。小さい貝、波間の建物は竜宮城、仔細に見てみれば逆巻く波と見えたのは玉手箱の煙だった。機知に溢れた小紋柄に、披露宴に向かないとは思いもしなかった。

数十年たって、京都の高名な染織家から「波に竜宮城の柄は、着手は乙姫さまという意味がある」と教えられた。。。

お召が好き
上野池之端にある有名な帯締めの店「道明」で、「お召し料でいらっしゃいますか」と訊ねられても驚いてはいけない。お召し物はきものの敬語だが、「お召」といえばお召縮緬の略称。縮緬の横しぼに対し、縦にしぼが感じられる。お召の筆頭は西陣お召。中級と言われた桐生お召は絶えたようだ。縞お召、絣お召、縫い取りお召、マジョリカお召。。。様々なお召の流行があった。

桜の帯留め
梅が終わると桜の帯留めを身につける。横3センチの楕円形、黒に金の桜がにぶく光る肥後象嵌(ひごぞうがん)。肥後象嵌は、近江から鍛治師を迎えて武具を作らせたのが始まり。

目貫は刀の柄の両側、握るところに一対つく縦2センチ、横6センチほどの金具で菊花などをかたどり装飾性が高い。

笄は先端は耳かきの形で、古く「髪掻き」の言葉。実際に乱れた髪をなで整える役目もしたが、江戸時代の女性の髪飾りになり、武士の笄は、斬り落とした敵の首の耳からさし通して首実検に使われた。

小柄は文字通り小刀で、握る部分が刀身の鞘に添ってあらわれている金工の意匠は笄と揃いで、これを合わせて三所物を称する。

時を経て、目貫は、小柄や笄を切って帯留めになった。柄頭は、頭部に紐穴があり刀の柄、握る部分がすべらぬように紐を巻くための始まりで、通した平打ちの紐幅は三分。これを帯留にと考えたのは、芸者であるというのは、著者の推理。

矢絣
矢絣はどうしても白地に紫、それもお召でなければならない。母が遺してくれた矢絣の銘仙は平織りの銘仙の紫の浅さと鼠地の色目が心にぴたりとこなかった。(〜この後更新予定)

☆参考サイト
「日本刀各部の名称」
「ウィキペディア日本刀」
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【出版社/著者からの内容紹介】忘れられて久しいきものに関する知識やしきたり、今と昔の比較など実用性も加味しながら、着付け教室の生徒との交流や四季折り折りの情緒豊かなエピソード

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by yomodalite | 2009-04-20 23:28 | きもの | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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