カムイ伝講義/田中優子

カムイ伝講義 (ちくま文庫)

田中 優子/筑摩書房

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本書は、法政大学での講義と、小学館の『決定版 カムイ伝全集』の出版特別企画、ウェブ版「白土三平とカムイ伝の世界」に連載された「カムイ伝から見える日本」をもとに書き下ろされたもの。

昨年出版された田中優子氏の著作なので、早く読みたかったものの『カムイ伝』が未読のため躊躇していたのですが、読了後の結論から言えば『カムイ伝』が未読でも結構楽しめます。

田中氏は「江戸ゼミ」の講義に『カムイ伝』を使用したのは、江戸のビジュアル資料として、都市で消費されるメディアのみが注目されているが、都市住人以外の人々の生活を描いた資料としてはもの足らない。『カムイ伝』には、江戸の百姓、非差別民、漁師、武士など、村の人々の生活や生き方など、さまざまなテーマが描かれているからだと、説明している。

壮大なテーマをもち、未だ完結していない『カムイ伝』のサブテキストとしては、もちろんですが、江戸の身分制度と、現在の格差社会との違いは何かなど、江戸時代の日本に興味がある人には、惹かれるテーマが満載です。

★★★★☆

☆参考サイト↓
白土三平とカムイ伝の世界
松岡正剛「千夜千冊」カムイ伝/白土三平

【内容】
第1章 『カムイ伝』の空間と時間
舞台となっている日置藩に岸和田を想定し、リアルな空間としての城下町の成り立ち。

第2章 夙谷の住人たち
江戸時代の穢多非人の生活と実像。

第3章 綿花を育てる人々
江戸時代に初めて体験される「綿花栽培」を通してみる百姓の生活。高価な肥料を必要とする綿花栽培の導入と崩壊。

第4章 肥やす、そして循環する
排泄物を肥料とする、江戸時代の循環型社会。さまざまな肥料。肥料の情報化と商品化。都市生活と貨幣経済は、無駄で無意味なゴミを出す。

第5章 蚕やしない
蚕から布まで。絹の国産化。絹織物の高度な発達。養蚕と絹の拡大は、原日本人と大陸人の混血の拡大。生糸の隆盛に反して苦しい生活を強いられたことによりおこる生糸一揆は、厳しい専売制にも原因があった。

第6章 一揆の歴史と伝統
一揆とは「揆(みち)を一つにする」という漢語。百姓一揆のルール、一揆の原因、百姓一揆は近代労働争議の先頭を走っていた。

第7章 海に生きる人々
『カムイ伝』の漁のシーンの迫力。納屋集落。技能をもった漁師が全国を移動しながらその技法を伝え、流通が進み市場が拡大した。

第8章 山に生きる人々
エネルギー源であった山の管理体制(環境対策)。新田開発は環境破壊。発展と破壊が共存する世界。日本の森林はなぜ残ったのか。マタギ(狩猟専業者)の生活。サンカ(山部漂泊者)の生活。平和な鉱山町。

第9章 『カムイ伝』の子どもたち
子どもとは何か?。たくさんの親。生きる力とは何か。

第10章 『カムイ伝』の女たち
社会的性差の克服。娘組、嫁組、婆仲間。恋愛と結婚。女性の存在感。

第11章 『カムイ伝』が描く命
「命」とは何か。殺すことにも生かすことにも使える技術。島原・天草の乱。二つの外科手術。生態系。

第12章 武士とは何か
江戸時代の武士は矛盾そのもの。武士の生活の実態。武士は必要だったか?

おわりに いまもカムイはどこかに潜んでいる
現代日本人そのものが、この歴史のなかでいかなる存在なのか、考え込むようになるテーマにあふれている『カムイ伝』。総中流が達成された70、80年代よりも、現代は『カムイ伝』が身近に感じられる世界だ。
__________

【BOOKデータベース】コミック界の巨星・白土三平のライフワークが江戸学の新視点を得て、新たな輝きを放つ!「いまの日本はカムイの時代とちっとも変わっていない」競争原理主義が生み出した新たな格差・差別構造を前に立ちすくむ日本人へ—。江戸時代研究の第一人者が放つ、カムイ伝新解釈。 小学館 (2008/10)



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by yomodalite | 2009-04-15 15:30 | 歴史・文化:美術 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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