シネマほらセット/橋本治

シネマほらセット

橋本 治/河出書房新社




内田樹氏との対談集『橋本治と内田樹』で、本書を読みのがしていたことを知って、慌てて読んでみました。もちろん、まだまだ読んでいない橋本本は多々あるのですけど、本書は2004年発刊でアストロモモンガ系・・・現在のところ在庫あります。未読の方はお急ぎくださいませ。

さて、シネマほらセットは、館主が『ゴジラ対金日成』で成功した金をつぎ込んだ港区贋麻布のドーム型室内嘘つき映画館。ドーム型なので野球もやれれば見本市もできる。評判が悪ければ自転車に積んで夜逃げも出来る、などという妖しげな館主は埋もれた映画の発掘上映に力を注ぐと言ったものの、ハリウッドでは日本ブームが到来し、年末は忠臣蔵にスターが総出演という事態。『ガラスの仮面』『エデンの東』『源氏物語』がどんなことになったかは、内田先生のサイトを見ていただくとして、

内田樹の研究室
http://blog.tatsuru.com/archives/000166.php

館主の語り口調がたまらない『赤垣源蔵/孤独の晩餐』をちょっぴり紹介します。

長大な長回しによる思想的映画で有名なテオ・アンゲロプロスによる「忠臣蔵外伝」!!

主演:ハーヴェイ・カイテル、イレーネ・パパス、マリアンヌ・フェイスフル
監督:テオ・アンゲロプロス
脚本:テオ・アンゲロプロス、堺屋太一
撮影:ヨルゴス・アルヴァニテス
音楽:ミキス・テオドラキス
原題:GENNZO,Or A Sealed Bottle Of Wine
(源蔵、あるいは封印されたままのワインボトル)
配給:シネカノン

1999年 フランス、イタリア、ギリシャ、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ合作
三時間二分

・・・クエンティン・タランティーノ監督・脚本によるオムニバス版の忠臣蔵外伝が、ピーウィー・ハーマンの屋台そば屋を狂言まわしにして、豪華キャストで撮影中でありますが(ブルース・ウィリスの赤垣源蔵、ジョン・トラボルタの決闘高田馬場に、ジャン・レノの清水一角だそうです)、そちらより先にフランス、イタリア、ギリシャ、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ合作のこちらが完成してしまいました。

 赤穂四十七士の1人、飲んだくれの赤垣源蔵が吉良邸への討ち入り直前、一升徳利を提げて兄に別れを告げにいく。(中略)ご存知忠臣蔵外伝「赤垣源蔵徳利の別れ」が四時間半のとんでもない大作になってしまいました。

長屋の屋根には雨が降る、ざんざかざんざか雨が降る。長屋の路地には、ジジーもババーも傘を差して佇んでいる。なんで佇んでいるのかは知らないが、ただ佇んでいる。そこへやってくるのがハーヴェイ・カイテル扮する赤垣源蔵であります。

源蔵の表情は暗い。なんで暗いのかよくわからない。今宵暮れれば念願の吉良邸討ち入りというのに、源蔵の表情は冴えない。行かねばならぬ、同志がみんな待っている。しかし、源蔵の心には戦いへの不安と疑問がエーゲ海の潮のように満ちてくる。果たして兄は自分の心を理解してくれるのか。祖父の代から受け継がれた古いワインボトルを持って、兄の住む長屋へとやって来た源蔵の前に立ち塞がるジジーとババー。泣く子供。長屋に住んで子供達に手習いを教えていた寺子屋の先生が、十七歳の少年に刺し殺されたという。(中略)

兄はどこへ行ったやら。待てど暮らせど帰らない。兄嫁もまたなにをしているのやら。狭い長屋の一間きりで、源蔵と兄嫁は背を向けたままただ座して黙している。ああ、このまま映画はどうなるのやらと思うと、ザーザー降る雨の音はいつかザーザーと鳴る潮騒の音と重なり、アクロポリスの丘に立った幼い源蔵とその兄は、青いエーゲ海を見下ろしている。

バルカンの赤穂は塩の名産地。それを狙ってオスマン・トルコも攻め入るし、ヴィクトリア女王は遠縁の吉良上野介を国王に押し込んでくるーハプスブルグの皇位継承者フランツ・フェルディナンドがアテネにやってくる。その時の勅使接待役の選ばれた浅野内匠頭は大セルビア主義者の陰謀によって吉良上野介に斬りつけざるを得なくなってしまったのだが、ユーゴと不仲のアルバニアに仕官した源蔵の兄はどこへ行ってしまったのか? 彷徨える記憶と交錯する現在は着々と日暮れに近づいているが、兄嫁は酒屋の御用聞きと不倫の関係にあるらしい。(中略)

空にはボスニア空爆を目指すNATO軍のジェット機の爆音がする。(中略)長屋の前に雨に濡れたアルバニア系の難民がムシロをかぶって音もなく列を作る。暮れの鐘が鳴って、しかし兄は一向に現れない。現れない兄を探して、赤垣源蔵は外に出る。どこかでまた人が殺されたらしい。幼い兄と弟が、降る雪の中で泣いている。目指すは本所松坂町。両国橋の上では、俳諧師の室井其角が流れる隅田川を見つめている。巨大な熊手に磔られたイエス・キリストが厄落しで流されていく向こう側では、遂に空爆が始まっていた。
壮大だがよく分かんない映画ですが、芸術ですから見てやって下さい。


『ガラスの仮面』は、北島マヤ(白石加代子)、姫川亜弓(デミ・ムーア)、速水真澄(キアヌ・リーブス)、キャサリン・ヘップバーンの月影千草以外、もう考えられないし、『アメリカン・クイーン』は絶対観たくなる。キネマ旬報読者ほど映画通でなくても楽しめそうな映画妄想が満載!
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【BOOKデータベース】鬼才が精魂こめて書き上げた映画のほら話!!『キネマ旬報』誌に連載され、世間をひたすらに唖然とさせたこの世に存在しないウソ映画集、遂に待望の単行本化。

【出版社/著者からの内容紹介】こんな映画があったらおもしろい、こんな映画があってもいいはずだ、なぜこんな映画をとらないんだ。という思いのたけを吐露する告発嘘八百八町面白本。監督、キャスト、スタッフなどはすべて実名でお送りする、橋本治全開。河出書房新社 (2004/3/2)

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by yomodalite | 2009-04-01 14:59 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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