宿命—「よど号」亡命者たちの秘密工作 (新潮文庫) /高沢皓司

宿命―「よど号」亡命者たちの秘密工作 (新潮文庫)

高沢 皓司/新潮社



NHK週刊ブックレヴューで、エッセイストの青木るえか氏が(知らない人ですが)本著を推薦していたことから読んでみることに。

今まで北朝鮮および拉致事件に関しては、あまり読書意欲がわきませんでした。今、真実がわかるとは思えないので。本著が出版されたのは1998年。小泉首相が訪朝したのが2002年なので、拉致事件が連日のように報道を賑わす少し前のこと。アメリカが北朝鮮を「悪の枢軸」と呼んだのと前後して、北朝鮮の酷い惨状がこれまでかと報じられるようになり、アメリカの忠実な僕である小泉首相による、初の日朝首脳会議が行われている。

・日本はなぜ「拉致」をこれほど長い期間、無視し続けたのか?
・なぜ北朝鮮はこの時期に「拉致」を認めたのか?
・拉致が真実なら、なぜ北朝鮮は拉致被害者を返せと言えるのか? 
・拉致が真実なら、どうして日本は「日朝平壌宣言」に署名したのか?

わからない点はいくつもありますが、それは北朝鮮が「カルト」だからではないと思う。

本著に書かれてあることは、現在の北朝鮮ならびに金日成やチュチェ思想などに一般の日本人が抱くイメージからズレた点はなく「北朝鮮」の気味の悪さが一層浮き彫りになるのですが「金日成を誰が作ったのか」という点に関しては触れられていない。

とはいえ、私が読んだ単行本版で4センチ近い厚みを感じさせず、集中して読ませる内容は、間違いなく面白いと言っていいでしょう。著者は、全共闘運動に関わったジャーナリストですが、私と同じく当時の独特の用語が今イチわからず「よど号」と言われてもピンとこない世代が読んでも惹き込まれる内容です。

ひとつひとつ謎を問き明かしていく読書の楽しみが半減しそうなので、内容にはあまり触れられませんが、国交のない北朝鮮にハイジャックという手段で渡航したにも関わらず、1年足らずで日本に帰国するつもりだったことなど、「よど号」メンバーの認識には信じられない点が多いのですが、ただひとり小西隆裕のみ、渡航前に恋人だった福井タカ子を北朝鮮に呼び寄せていることから、少なくとも小西には亡命意志ががあったと思われることは要チェック。

他のメンバーにも、その後チュチェ思想を学んだ日本人が「妻」として渡航している点なども、後の「拉致」計画の必要性を疑わせる。また横田めぐみさんのような中学生の拉致に至っては、北朝鮮のイメージダウンと日本との関係を悪くさせるため以外の理由が考えられない。

1992年、ハイジャック事件のとき「身代わり人質」となった山村新治郎衆議院議員が、北朝鮮訪問前日に、精神的不安定な次女により刺される。山村議員は田宮高麿と面会予定があった。その3年後の1995年に、田宮高麿は「心臓麻痺」により突然死亡。すぐに火葬にされた。

著者は、90年以降リーダーである田宮高麿への取材を続け、本著は田宮死亡後に書き上げられている。

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[BOOKデータベース]1970年3月末、赤軍派メンバー9人が日航機をハイジャックし、北朝鮮へ亡命した「よど号」事件。謎に包まれた犯人たちのその後の人生とは。犯行の計画、北朝鮮の思想教育、日本人拉致の実態、そして日本潜入工作—。恐るべき国際謀略の尖兵と化し、世界を舞台に暗躍した彼らの秘密工作の全貌を丹念な取材で初めて明らかにした衝撃のルポルタージュ。講談社ノンフィクション賞受賞。 新潮社 (2000/07、単行本初版1998年)




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by yomodalite | 2009-02-21 12:03 | 報道・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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