2009年 01月 29日
Dの複合(新潮文庫)/松本清張 |
『黒い画集』のあとに何を読もうか迷いましたが、夥しい量のTVドラマなどで、なるべくネタに見覚えがなさそうな作品ということで本著を選びました。タイトルの意味はちょうど半分ほど読み進むと登場します。北緯35度、東経135度の英訳 North Latitude 35 degrees East Longitude135 degrees 4つの「d」が重なり合っているから「Dの複合」(中略)それに緯度・経度は地球をたてとよこにそれぞれ2つに割っているから、そのかたちからしてもD形の組み合わせになっている
と、作中の作家によって説明されるのですが、北緯35度、東経135度でなくても「D」は4つ。重なり合っているというのも(?)なんですが、ストーリーには様々な「複合」があり清張作品の中では特に謎解きの面白さが味わえる作品ではないでしょうか。
島田荘司のデビューが、松本清張の流行により衰退していた「本格ミステリ」の復興の先駆けになったという知識などから(私はお二人ともリアルタイムに読んでいませんが)清張には「ミステリ」の印象があまりなく両者は対極の存在と思っていたのですけど、「Dの複合」には、島田作品の手触りとかなり近い感触があって、宮部みゆきだけでなく、松本清張の影響の大きさというか巨人ぶりをあらためて実感。
本著の検索をしていて不思議だったのですけど、清張ファンの人はネタばれに関して気にしない方が多いようなので、未読の方はお気をつけくださいませ。
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【BOOKデータベース】作家の伊瀬忠隆は雑誌の依頼を受けて「僻地に伝説をさぐる旅」の連載を始めた。第一回浦島伝説の取材地丹後半島いらい、彼の赴くところ常に不可解な謎や奇怪な事件が絶えない。そして突然の連載打切り。この企画の背後に潜む隠された意図の存在に気づいたとき、伊瀬は既に事件の渦中に巻き込まれていた。古代史、民俗説話と現代の事件を結ぶ雄大な構想から生れた本格的長編推理小説。新潮社:改版版 (1973年、光文社1968/12初版)
by yomodalite
| 2009-01-29 12:34
| 文学
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