立川志らくの現代映画聖書/立川志らく

f0134963_13145765.jpg映画評論家という人が嫌いだ。1日に何本も映画を観ているなどという話を聞くと「ウェっ!」と思う。毎日ラーメンを食べている人と同様にきもち悪くて、そんな人の言うことなど聞きたくないと思う。同様の表現が本著にもあって、まず共感。滝本誠、町山智浩、竹熊健太郎氏など、信頼している数少ない評論家以外で、エリート集団立川流の中でも、談志師匠に贔屓されていると評判の志らく氏だけに、取り上げられている映画も好みがはっきりしていて、好き嫌いがすぐわかるところがイイです。ただし現代映画というよりは、近代映画のバイブルかな。

「観読記」
http://mec666cem.exblog.jp/10624851/



【監督編】

◎エルンスト・ビッチ

『生きるべきか死ぬべきか』(1942)
第1位。ビリー・ワイルダー好きは絶対に観るべし。お洒落な会話による物語の進行。ナチスのスパイ殺害に関わってしまったワルシャワの劇団員たち。祖国を捨てる覚悟を決め脱出のため大芝居を打つ。

『天使』(1937)
第2位。ディートリッヒ主演。彼女の美しさ、魅力がもっとも良く出ている映画。英国外交官の妻が夫の旧友と出会い恋心を抱いてしまう。ラスト場面が秀逸。

◎ビリー・ワイルダー

『お熱い夜をあなたに』(1972)
第1位。ビリー・ワイルダ−の集大成。無名に近く、完成度は『アパート〜』や『お熱いのが〜』のほうが上だが、老成したワイルダーが人間を描くことに終始している。

『情婦』(1957)
第2位。映画史上最高のドンデン返し映画。法廷劇。チャールズ・ローソンとディートリッヒの演技合戦が見物。

◎フランク・キャプラ

『我が家の楽園』(1938)
第1位。金儲けに血道を上げる実業家は、息子が自分の秘書とつき合っていることから、不思議な一家の存在を知る。今の時代に観ると大いに共感できる。若者が観るべき映画。

『素晴らしき哉、人生!』(1946)
第2位。映画史上もっとも感動出来る素敵な映画。善人の男が己の悲運を嘆いて自殺しようとする。しかし天使の力により自分が生まれていない世界を見ることができる。すると街がまったく違う街になってしまっているのだ。この映画のラストで涙を流さない人がいたら、その人は悪魔かもしれない。

◎ウッディ・アレン

『ブロードウェイのダニー・ローズ』(1984)
第1位。アレンの「ニューヨークの風景画・人物画」として最高。ラストでミア・ファローを追いかけていく時の街並が抜群。

『カメレオンマン』(1983)
第2位。爆笑喜劇。

◎小津安二郎

『長屋紳士録』(1947)
最高傑作は『東京物語』であることは間違いないが、敢えてこちらを1位とする。何故なら幅広い世代が観て納得できるから。迷子か捨て子か、下町の長屋に現れた男の子。対処に困った長屋の住人たちはくじ引きで泊める家を決めることにするが。。。

◎黒澤明

『生きる』(1952)
第1位。実はこの映画は喜劇。強烈なブラックユーモアが満載な映画。

『どん底』(1957)
第2位。

『酔いどれ天使』(1948)
第3位。三船敏郎の魅力が最高。「あたふたする」三船の良さが良く出ている。

◎川島雄三

『洲崎パラダイス 赤信号』(1956)
第1位。駄目男と駄目女の悲喜劇をこれだけ見事に描いた作品はない。

『とんかつ大将』(1952)
感動社会派ホームドラマ。アメリカ的。

◎山田洋次

『男はつらいよ 寅次郎相合傘』(1975)
第1位。マドンナは浅丘ルリ子。浅丘ルリ子のリリーが登場する作品は全て秀作。『寅次郎忘れな草』『寅次郎ハイビスカスの花』『寅次郎紅の花』以上4本。

『男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎』(1983)
第2位。マドンナは竹下景子。人情喜劇として完璧。どちらもボロボロになるまで傷ついていない。

『男はつらいよ 寅次郎純情詩集』(1976)
第3位。森川信のおいちゃんの作品がベスト3に入ってないのは嫌だが、山田洋次監督の作品としてみるとこうなる。
マドンナは京マチ子。前半が優れた喜劇。それが突然物語は悲劇へと変わっていく。

【駄作】
『幸福の青い鳥』『寅次郎わが道をゆく』『寅次郎恋愛塾』『拝啓車寅次郎様』『純情編』。吉永小百合『柴又慕情』『寅次郎恋やつれ』。第3作はもっとも寅次郎らしい失恋物語、第4作は相当笑える喜劇だが山田洋次監督ではない。第5作は『望郷編』は評判が高いがこれは「男はつらいよ」の人情喜劇のスタイルを築いた作品であるだけで、その前の何作かと比べると笑いが極端に少ないし、長山藍子のマドンナの身勝手さが少々腹立たしい。

【秀作】
喜劇・・・『寅次郎と殿様』『寅次郎夢枕』
マドンナが美しい・・・大原麗子『噂の寅次郎』『寅さん、私泣きそう」。竹下景子『口笛を吹く寅次郎』。松坂慶子『浪速の恋の寅次郎』。
エロス・・・いしだあゆみ『寅次郎あじさいの恋』。風吹ジュン『寅次郎の青春』
感動・・・三船敏郎『知床旅情』

【俳優編】
★ジャック・ヴィルレ『奇人たちの晩餐会』※ここ数十年で最高の喜劇映画。ヴィルレはこの映画の他『クリクリのいた夏』で温かな人間の役を演じ、それはそれで爆笑をさらった。
アル・パチーノ『スケア・クロウ』
ロバート・デニーロ『キング・オブ・コメディ』※嫌な男を演じている
ピーター・セラーズ『パーティ』
ジャック・レモン『おかしな二人』
アラン・ドロン『ボルサリーノ』
チャールズ・ブロンソン『さらば友よ』
マルチェロ・マストロヤンニ『マカロニ』※全盛期を過ぎてからの集大成。共演ジャック・レモン。
ジム・キャリー『トゥルーマン・ショー』
アーノルド・シュワルツネッガー『ジングル・オール・ザ・ウェイ』※近年最高の喜劇。
ジョン・カザール『狼たちの午後』※彼なくして「ゴッドファーザー」「ディアハンター」はなかった。
レスリー・チャン『さらば、わが愛/覇王別姫』※この映画によりレスリー・チャンは映画史に残った。
ローレンス・オリヴィエ『嵐が丘』
フレッド・アステア『イースター・パレード』※ラストのダンスは鳥肌。
ジーン・ケリー『巴里のアメリカ人』
フランク・シナトラ『私を野球につれてって』

★アシュレイ・ジャッド『ノーマ・ジーンとマリリン』※志らくのもっとも好きな女優。華があり、品があり、芝居が上手くて美人。『サイモン・バーチ』がもっとも美しい。『ダブル・ジョパディー』も凄い。
★シャーリーズ・セロン『サイダーハウス・ルール』
リタ・ヘイワース『夜の豹』※モンローよりセクシーで、バーグマンより気品がある。
フランソワーズ・アルヌール『フレンチ・カンカン』※ロリータと大人の女が共存。
デビー・レイノルズ『雨に唄えば』※ハリウッドで貴重な控えめの魅力。
ロミー・シュナイダー『離愁』
グレース・ケリー『上流社会』
ユマ・サーマン『恋に落ちたら・・・』※デニーロ共演。傑作ラブ喜劇。
チャン・ツィイー『初恋のきた道』※自然の中にいる美少女は自然そのもの
エリザベス・テイラー『陽のあたる場所』※男を狂わす可憐な魅力。
エヴァ・ガードナー『ショウボート』※女の可愛らしさを凝縮。ミュージカル。

森繁久彌『グラマ島の誘惑』※川島雄三監督。無人島にたどりついた皇族と軍人と従軍慰安婦たちの奇妙な生活。マキノ雅弘監督の『次郎長三国志』の森の石松も第注目。
フランキー堺『人も歩けば』
森川信『新・男はつらいよ』シリーズ4作目。『猫と鰹節』も大注目。
財津一郎『喜劇・ああ軍歌』※純粋喜劇人の真骨頂

桂木洋子『波』※色気を超える可愛らしさ
左幸子『飢餓海峡』※日本で一番上手い女優
高峰秀子『稲妻』※成瀬巳喜男監督。4人の子供の父親が皆違う母子家庭。悲劇の傑作。

【出版社 / 著者からの内容紹介】
すべての映画ファンに捧ぐ、究極の映画ガイド!!
落語家にして映画監督 立川志らくが選んだ名画集
本来、映画評なんてその作品が好きか嫌いかである。
「私の書いた『映画聖書』は、一切、気取っていない。単純に面白いと思った映画について書いてあるだけだ。さあ、面白い映画を知りたい御仁は『映画聖書』をお開きくださいませ」<まえがきより>講談社 (2005/6/24)

<5段階評価別インデックスで、志らく師匠オススメの名画も一目瞭然!!>
●映画監督13人
アルフレッド・ヒッチコック/アンリ=ジョルジュ・クルーゾー/ウディ・アレン/エルンスト・ルビッチ/チャールズ・チャップリン/ビリー・ワイルダー/フランク・キャプラ/フランシス・フォード・コッポラ/大林宣彦/小津安二郎/川島雄三/黒澤明/山田洋次
●俳優74人
アーノルド・シュワルツェネッガー/クリント・イーストウッド/トム・ハンクス/モーガン・フリーマン/ロバート・デ・ニーロ/エリザベス・テイラー/グレース・ケリー/メグ・ライアン/リタ・ヘイワース/渥美清/フランキー堺/森繁久彌/左幸子 ほか
●掲載作品全315本!!
【外国映画】『雨』/『雨に唄えば』/『生きるべきか死ぬべきか』/『お熱い夜をあなたに』/『奇人たちの晩餐会』/『ギャラクシー・クエスト』/『禁じられた遊び』/『ゴッドファーザー』/『ゴッドファーザーPART 2』/『ザッツ・エンタテインメント』/『情婦』/『少林サッカー』/『スケアクロウ』/『素晴らしき哉、人生!』/『第三の男』/『チャップリンの殺人狂時代』/『チャップリンの独裁者』/『ディア・ハンター』/『天使』/『初恋のきた道』/『マカロニ』/『マダムと泥棒』/『街の灯』/『モダン・タイムス』/『ライムライト』/『ローマの休日』/ほか
【日本映画】『生きる』/『男はつらいよ』/『スワロウテイル』/『転校生』/『東京物語』/『長屋紳士録』/『なごり雪』/『晩春』/『めし』/『ゆきゆきて、神軍』ほか
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Tracked from 観読記(かんどくき) 感.. at 2009-01-16 11:26
タイトル : 現代映画聖書
「立川志らくの現代映画聖書」 立川志らく 講談社  “独断と偏見で”という常套句がある。多くは批判されることを予想して防護線的に使用される言葉である。つまり日本では公の場で自分の意見を言うときに、周囲の人の意見を考慮してバランスをとりつつ発言する、という態度がよしとされているわけである。しかしそのような意見は面白くもないし、役にも立たない。 もう二十年ほども前になるが映画評論家の四方田犬彦がこんなことを言っていた。  映画評論家の文章はどうしてこんなにもつまらないのか?それは映画評論...... more
Commented by mec666cem at 2009-01-16 11:29
yomodaliteさんはじめまして。
いつも楽しく読んでいます。掲載される本や映画が自分の知らないものが多いので参考にさせていただいています。
失礼ながらTBさせていただきました。
吉岡栄三郎
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by yomodalite | 2009-01-12 13:16 | 映画・マンガ・TV | Trackback(1) | Comments(1)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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