文学少女/林真理子

ようやく訪れた林真理子へのマイブーム。こちらは94年出版。
個人情報やプライヴァシーの問題など、柳美里の処女作の裁判への文学ファンの感想を読んでいると、物書きになることの難しさを痛感するが、なぜか文章を書きたがる人は増えていて、読む人の方が減っているらしい。

「物書きになるということ、小説を書くと言うことは、常人には考えられない残酷さを持つことでもある。だいいち肉親の目の触れる場所で、自分の性のことを語る職業があるだろうか。」

本屋の娘だった著者による自伝的ともいえる内容。文学少女という存在の真実に迫る7編。


「本の家」
小さな町の書店経営に苦労する母、昭江。17歳になる史子は昭江40歳のときの子供。昭江は若い頃小説家になるのが夢だった。

「遠い街の本屋」
ベストセラーの新刊書だけ並べてある本棚は、一見美しいけれどいびつな冷たさがある。売れ残った古い本ばかりだと、本棚の空気はよどんでいる。ガラス戸どしに見た本棚はまさにそのとおりだった。店主らしい男の歯がとても綺麗だった。注文した本を取りに来るときに、「また次に取り寄せてもらう本を考えておこう。この男が思わず“おっ”と感心するようなものを」

「文学少女」
「読者の体験手記入選発表」。史子の手記が採用された。想像だけで書いた性の体験手記。史子は正真正銘の処女だった。

「痩せぎすの男」
大正時代の初期に建てられたであろう出版社のビルに史子は来ていた。2作目の小説を読んだ仁科という編集者が史子を呼び出したのだ。

「往復書簡」
史子は母の秘密を得たいと思う。でも本当に手に入れたとき、本当に事実に立ち向かう気持ちがあるだろうか。母は悩んだ末に、史子に語りだした。

「影のないマリア」
沢渡久仁子の恋の苦しみというものを、どれほど史子は聞いてやったことだろうか。彼女は今年40歳になる弁護士。若い頃アメリカ人と結婚した久仁子は、その後も外国人、日本人と見事なほど替わりばんこにつき合った後、年下の男と籍を入れた。
久仁子は憮然として言う。
「そこいらの馬鹿な女が、あたり前みたいに子供を生んでいるじゃない。それなのにそうして私のように優秀な女の子どもが出来ないの。ずっと世の中のためになるはずなのに。こんなのっておかしいじゃないの」

「本の葬列」
母から店を閉めようかと相談された時、史子は一も二にもなく賛成した。

「本っていうのは始末が悪いからねぇ。売れ残っても魚や果物みたいに腐りゃあしないでいるまでも残る。そうかといって捨てるのは冥利も悪い。こんなに始末の悪いもんはないようね」
「そうだよね。死体みたいなもんかもしれないね。焼くか、海の底に沈めるか、どっちかひとつだ」
「本は死体みたいに、嵩高くて重いからね。回収業者もいい顔をしない。私はお金を払ってもっていってもらうつもりなのさ。そうなるとまるで火葬場と同じだよね」
______________

【出版社/著者からの内容紹介】奥手な娘史子は、本を読むことで男を知り、想像の中で男と関係し、書くことで現実に男を愛した。著者の告白にも似た、自伝的短篇集。文藝春秋 (1994/01)

【BOOKデータベース】母を疎み友を憎みながら、愛を、非凡な世界を、称賛の言葉を渇望した青春の日々—。「林真理子」を切々と投影した待望の秀作。





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by yomodalite | 2009-01-03 21:57 | 文学 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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